ニセコの奥座敷とも言える蘭越町の新見温泉を札幌のオフィスビル賃貸・敷島屋が取得した。敷島屋は、札幌市南区の札幌南カントリークラブ(CG)駒丘コースの経営も担っており、ゴルフと温泉を組み合わせた観光分野で事業拡大を目指す。(写真は、新見本館)
海外資本によるホテル建設ラッシュが続くニセコ地区。外国人観光客や道内外から観光客が多く訪れるこの地区から離れ、喧騒から遠ざかった深山幽谷の地にあるのが新見温泉。すれ違う車もなく、走っているだけで孤独感に襲われる先の先にあるのが新見温泉ホテルと新見本館。
施設を所有運営していた新見観光の新見健社長は今年3月、後継者がいないことなどの理由から閉館、明治の時代から100年続いた温泉郷を閉じた。もともと新見氏の数代前が開拓に入り、山中でたまたま見つけた温泉を利用して始めたのが新見温泉。歴史のある温泉郷だけに廃業を惜しむ声が多かった。
敷島屋の中村達也社長(72)は、新見温泉を知らなかったが、ある人物を介して秘湯として根強い人気があることを知り、8月に取得を決めた、敷島屋は、札幌南CGの経営を実質的に行っており、「ゴルフと温泉の相乗効果が期待できる」(中村社長)のが取得の理由。
新見温泉は、新見温泉ホテル(20室)と新見本館(22室)からなり、改修をしたうえで12月から日帰り客の受け入れを始める。運営は、敷島屋の所有する敷島ビルに入っている札幌観光バスの子会社、クールスターが担う。
敷島屋は、現在、札幌中心部に敷島ビルと敷島北1条ビル、札幌プラザビルの3棟のオフィスビルを所有している。かつて札幌の駅前通に軒を連ねていた旅館業が敷島屋のルーツ。中村社長は、「今回の新見温泉の取得によって原点の事業に戻る意味もある。今後は、道外企業のバックアップ拠点としてオフィスビルのテナントリーシングを進めるほか、ゴルフ場と温泉旅館といった観光関連で成長していきたい」と話している。