セコマ(本社・札幌市中央区)が15日に開催した2016年の政策説明会。会場となった札幌市中央区の札幌パークホテルには、メーカーや取引先などから多くの関係者が詰めかけた。冒頭、丸谷智保社長(61)が行った恒例のスピーチを紹介する2回目。地域密着の商機と現実の困難さを訴えた。(写真は、セイコーマートの店内調理ホットシェフのコーナー=セコマ提供)
私どもの今年のスローガンは『未来へ舵を切る』。小売業としてのコンビニチェーンは曲がり角に来ている中で、いち早くコンビニ小売業態からさらに進化を進め製造、物流、さらに農業生産法人による農産物生産を自前で行うような総合流通産業に脱皮をする。
私どもは早くから店舗を直営にしてきた。今は75%が直営店だ。ある中堅コンビニの社長と話したとき、FCか直営かの話になり、その会社は直営からFCを進めようとしていたため、「なぜ直営にするのか」と聞かれた。様々な理由があるが、ひとつは道内では高齢化が他地域よりも早く進んでいることもあって地方には後継者が少ないという現実がある。
もうひとつはロイヤリティが10%なので直営化しやすかった面もある。直営化によって残りの90%が外部流失しなくなるので非常にやりやすかった。FC制度にどっぷりつかり45%のロイヤリティを粗利からとっている仕組みではなかなかこうはいかない。
直営化で分かったのは政策の反映度、浸透度が深くなるということ。あるチェーンに私どもの惣菜を納品しているが、日を追うごとに発注が少なくなっていく。日配品でロスが出るからFCオーナーはロスの出るものに対して発注をどんどん絞るからだ。ところが直営店舗なら、自分たちの工場で作っている惣菜だから育てようということになる。直営ではそういう政策が浸透しやすいし、お客様に認知されるまで店頭に出し続けることができる。
ある商品で固定客を掴みブランド化していくのは非常に難しいが、直営化したことによって商品政策の浸透が非常に高まった。店内調理のホットシェフやワインがその典型だ。また配荷率がどんどん良くなって100%のものもある。これも直営化のメリットだ。
4月に日本マーケティング大賞奨励賞を受賞した。受賞理由は、コンビニの枠を超える地域密着型サービスの提供というもの。地元北海道の食資源を有効活用して生産、製造、物流、小売まで一貫して行っていて、プライベートブランドにあたるリテールブランド(RB)も1000品目を超える。独自の物流網を駆使して道内179市町村のうち175市町村に出店。地域と密接に繋がって地産地消を実践、災害拠点などの地域貢献も行う。これによって大手をしのぐ店舗網をユニークに広げていることが奨励賞の受賞に繋がった。
北海道に密着して事業展開しているということは、一方で過疎化や高齢化のマーケットと向き合わなければいけない。北海道の65歳以上の人口は2015年で29・1%。しかも増加ペースは早い。
セイコーマートのクラブカードは2000年にスタートして今は約455万人の登録会員がいるが、各年代別構成比を見ると確実に高齢化にシフトしている。40代が20%、60代は15%を占めている。会員の年代別売上げの前年比推移をみると、10代、20代は大きく伸びているが、30代以降は年代が上がるに連れて伸び率が低くなる傾向がある。
生活保護費が支給される1日と年金支給日の15日、さらに25日の給料日の偶数月3日間の高齢世代の売上げ推移を見てみると、10年ほど前は給料日の25日が一番高くて次に15日、1日の順だったが、2007年ころになると15日と25日が近づきだした。その後、たばこ増税の反動があって変動したが13年にはついて15日が25日を抜いた。今は、15日、1日、25日の順だ。
アベノミクスで賃金があがったと言っても、年金世代や生活保護世帯はむしろ厳しい状況になっている。従ってお金が入ってきたときに買うという状況がより強くなっている。この傾向が北海道ではっきりと出ている。地域密着は良いことだが、一方ではこうした高齢化、過疎化マーケットと向き合う必要がある。さてどうするか。(以下、次回に続く)