「北洋銀行の灯は消えない」――。看板のことである。大通公園に面した北洋ビルの屋上にある『北洋銀行』の広告看板は、本店が新しいビルに移った後も引き続き点される。景観条例で看板撤去後には新しい看板が設置できないためだ。
大通西3丁目の東南角にある北洋ビル。このビルから「はすかい」の大通西3丁目の西北角にある新しい北洋大通センターが今年5月に完成、「北洋ビル」から「北洋大通センター」へ続々と引越しが進んできたが、最後まで「北洋ビル」に残されたのが本店営業部。読んで字の如く、銀行の顔、まさに母店が離れるのを惜しむようにとどまっている。
「北洋ビル」は、昭和51年に竣工、相互銀行からの普通銀行への転換やバブル、拓銀破綻に伴う営業譲受など、この20年間を見ただけでも揺れ動く道内金融業界を静かに見守ってきた。ビルの「はすかい」にあった旧拓銀、東にある丸井今井が事実上破綻し、すぐに東の北陸銀行と一丁離れた西にある北海道銀行が公的資金の注入を受け入れて経営統合、「北洋ビル」の周辺はいつも世上の話題に溢れていた。
「北洋ビル」も世上に話題を提供したことがある。このビルに本社を置いていたそうご電器の破綻。そうご電器は営業譲渡されてビルを離れ、今では家電量販店の大海原の中に跡形もなく消えて行った。
さて、最後まで残った北洋銀行の本店営業部もいよいよ2011年1月11日という語呂合わせのような日に北洋大通センターに移転する。現在、北洋大通センターの1、2階にある大通支店が本店営業部に名前を変え、役割を変える。これで北洋銀行の機能は全て移転が完了する。
「北洋ビル」の1階から5階までは北洋銀行が所有し、6階から上は親密会社の交洋不動産が所有する。本店営業部が撤退した後については、「腹案はあるが具体的には決めていない」(横内龍三頭取)が2階から5階までは、市内に散らばっていた北洋銀行の関連会社群が集まってくる。
来年1月11日に本店が移れば、「北洋ビル」に「北洋銀行」はないことになるが、離れていく主の後ろ髪を引くように屋上に設置された看板だけが残る。札幌市の条例によって、大通公園に面したビルには看板規制があるためで、撤去してしまえば新たに看板が設置できないためだ。
新しい北洋大通ビルには「北洋銀行」の大きな看板は設置されていない。北洋銀行の行員たちは、自分たちの働いているオフィスから夜空に光芒を放つ「北洋銀行」のネオンを眩しげに見ることになる。
(写真は、北洋ビル屋上に設置された北洋銀行の広告看板)