社団法人北海道宅地建物取引業協会札幌中央支部は11月16日、札幌プリンスホテル国際館パミールで「市民公開セミナーinさっぽろ」を開催した。
目玉の基調講演は、法政大学教授でジャーナリスト、テレビコメンテーターの萩谷順さんによる「道都『さっぽろ』はどう生き延びるか?」。会場には約200人の市民や宅建業界の関係者が集まり、萩谷さんの講演からヒントを掴もうと耳を澄ました。
萩谷さんは10年前にテレビ朝日「ニュースステーション」のコメンテイターとして出演していたが、地域の生き残り策としてそのころと今とでは大きな違いがあると言う。
「10年前はそれぞれの地域が自分たちの地域をどう活性化させていくかを考えて実行していけば良かったが、それから10年が経過して今回のAPECの菅首相を見ても分かるように、日本という存在が心もとなく、おぼろげに見えている。地域の人々が自分たちの地域をどうするかということだけでなく、地域の人々は日本全体をどうするのかを考えていかなければならない時代に入ったということだ」
日本という入れ物が沈没しかかっている時代に、地域の視点だけでなく日本というワイドな視点が必要になっているという訳だ。ただ、萩谷さんは日本の歴史を振り返れば多種多様な地方のエネルギーが日本を作ってきたということも事実だとし、とりわけ北海道は140年前に開拓が始まり社会インフラを現在のように整備してきた経験は生きてくると強調する。
開拓が始まったころの北海道の人口は5~6万人。開道100年の1969年には人口が500万人を超えたが、これだけの短期間による地域開発例は世界を見渡しても過去にないという。急速な人口増を支えたのは基盤整備があったからこそだ。
北海道が底力を発揮するのは、日本の転換期に当たるということは歴史が証明している。明治維新で北方警備の重要性が謳われ、戦後は食糧、エネルギーの供給基地になった。そして今、TPP(環太平洋経済連携協定)が平成の開国といわれる中で北海道は三度目の役割を果たすときに差し掛かっている。
萩谷さんは、「21世紀から22世紀にかけて、北海道は日本の新世界に位置づけられるだろう。北海道こそが日本の顔になってくる。時代を切り開けるのは北海道だ」と訴えた。
依存精神が強いという道産子だが、この10年の財政環境や社会環境の大きな変化の中で、道産子の精神構造も変化してきたのは事実。一人ひとりの判断による行動が少しでも出てくるようになれば、北海道は日本のテールエンドから脱し、時を切り開くラッセルになる――萩谷さんの講演はそんな思いを強くさせるものだった。
(写真は、講演する萩谷さん)