「フードD」豊岡憲治社長インタビュー、高質化路線で利益率改善し単独生き残りに手応え

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 苫小牧に本部を置く食品スーパー「フードD」の豊月が店舗の高質化路線に踏み切ってから今年で5年目を迎える。前1月期は売上高こそ減少したものの高質化による粗利益率の改善で8%の増益を達成した。同業者や関係業界から経営悪化説が囁かれていた同社だが、豊岡憲治社長は高質化店舗への転換が効果を上げ始めたことを強調、元気さをアピールした。以下、豊岡社長との一問一答。P1030806

 ――昨年の経営概況はどうだったのか。
 
 豊岡 2015年1月期の売上高は183億円で経常利益は4億9000万円だった。前期比で6・2%の減収になったが逆に利益面では8%の増益だった。この原因は店舗の高質化によって粗利益率(売上高総利益率)を改善してきたからだ。
 
 ――食品スーパーの高質化に踏み切ったのは5年前から。この転換が成功したということか。
 
 豊岡 5年前の2010年9月に江別市大麻に高質化の新店「リスタ店」をオープンさせた。それまでは、どちらかと言うと低価格を指向したディスカウント(DS)店の運営が中心だった。質の良い商品、質の良いサービスなど高質化に転換したのは思いつきではなく、近い将来を考えた場合に競合店が増えて売上げは2割減ると予想されたためだ。競争激化の中でローカルスーパーが生き残るためには、お客様をどれだけ満足させられるか、すなわち質で勝負するしかないと思った。
 
 ――あのころは売上高が200億円を超えていた。それが2割減って160億円になると想定したのか。
 
 豊岡 当時の店舗運営方法では、競合店の増加によって毎年5~7%は売上げが減っていくと考えた。売上高200億円が160億円になっても粗利益率が23%あれば生き残っていけると考えて、高質化に転換することを決めた。
 
 ――高質化店舗の状況はどうか。
 
 豊岡 高質化店舗は現在全13店舗のうち4店舗だが、「リスタ店」や11年9月にオープンした「ボスコ店」などは前期比103~105%の伸びを確保、ようやく売上げが伸びてきた。これら4店舗の鮮魚の売上比率は20%で生鮮食品の比率は55%になっている。
  
 ――高質化路線はローカルスーパー生き残りの鍵になるのか。
 
 豊岡 高質への転換に踏み切ったのは正解だった。あのまま低価格での商売を続けていたらジリ貧になっていただろう。ただ、高質化への転換に踏み切れたのは当社の利益率が低かったからという面もある。ある程度の利益率があったら高質化でさらに利益を上積みしていくことはかなり難しかっただろう。DS中心で利益率が低かったから高質化で利益率を増やすことが可能という見通しがあった。
 
 ――今後、ローカルスーパーとして生き残れると見ているのか。
 
 豊岡 生鮮食品の比率は、全店平均で50%を超えている。ローカルスーパーで生鮮比率が50%を超えていれば生き残れる。粗利益率(売上総利益率)は、5年前は17~18%だったが、毎期ごとに1%ずつ上がりの前期で21・5%程度にまで上がった。当面の目標は23%だ。高質の店ができなければどの流通グループに入っても呑み込まれるだけ。自社の店の形を作って結果を出さないと同じ結果になると思う。ローカルとして生き残るには、徹底したDS化か高質化のどちらかしかないだろう。現在の高質化のレベルは目標の3合目付近。今後3年間で5合目まで引き上げたい。
 
 ――新店戦略はどうか。
  
 豊岡 現在の店舗数はむしろ多いくらいだ。トップの目の届く範囲はせいぜい10店舗。売上高を求めず個店での利益を上げていくことに力を入れる。しかし、店舗のスクラップ&ビルドは想定しており、既存店舗の地続きの隣接地の取得を行っている。
 
 ――財務面はどうか。
  
 豊岡 ピーク時には27億円ほどの金融機関借り入れがあったが、それもあと数年で無借金に近くなる。店舗の7割強は自社物件であり資産には含みがある。財務面で心配な要素はない。
 
 ――電子マネーなどの導入予定は。
 
 豊岡 リスタ店やボスコ店などで電子マネーを実験的に導入することを考えている。
 
 ――ボランタリーチェーンのセルコグループに加入しているが、他のグループに入る考えは。
 
 豊岡 セルコグループは、店舗研修や勉強会など最新情報を共有してレベルアップを図っていくための組織で以前やっていたPB(プライベートブランド)生産は止めている。セルコに入っていて共同仕入れ会社のCGCにも加入している大阪屋ショップ(富山県富山市)やサンシャインチェーン本部(高知県高知市)のメンバーもいる。

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