公益社団法人北海道観光振興機構は30日の理事会で、北海道経済連合会会長を6月に退任する近藤龍夫氏を次期会長候補として一本化することを決めた。6月16日の機構総会後の理事会で正式決定するが、焦点は実質的に機構の実務を担当する専務理事ポストに誰が就くかに移ってきた。(写真は近藤龍夫氏)
機構前会長の坂本眞一・JR北海道相談役は、生前、北海道の観光をさらに発展させるためには機構から距離を置いている道との二人三脚が不可欠として「カネはだすけど口を出さない道からの脱皮」を担当副知事に強く要請。道は坂本氏の意向を受けて官民一体での機構運営を模索していたが、坂本氏が今年1月に急逝。会長代行の制度が定款になかったため、坂本氏の任期である6月の総会まで予算や決算の職務を滞らせない緊急策として道の担当副知事が一時的に会長に就くことも検討した。
しかし、機構が北海道観光連盟から発展的に設立された目的は官主導からの脱皮だったため、一部の副会長らが反発。結果、副会長の野口秀夫氏(野口観光社長)が強く推した同じく副会長の星野尚夫札幌観光協会会長(現札幌振興公社社長、元北洋銀行常務)が2月に就任した。
星野氏は出身母体が市の関与団体である札幌振興公社であり札観協会長として札幌圏では知名度があるものの全道をカバーする機構会長として難があるとして北海道空港社長で道副知事OBの山本邦夫氏が浮上。
「山本氏が道空港社長で代表権を持ったままなら機構会長就任の可能性は高かったが、山本氏は社長を退き代表権のない副会長に就くことが決まり、そのあたりから近藤氏が候補として浮上してきた」(道庁関係者)
道は、道経済同友会のように機構の代表者を複数にすることで、坂本氏急逝によって混乱した事態を再び招くことがないようにしたい意向が強く、一時は近藤・山本の2人会長を模索。しかし、指揮系統が混乱すると理事らの反発が広がり、結果的に道は複数代表の提案を取りやめた。27日の機構正副会長会議では近藤・山本両氏を理事に推薦することを決め、30日の理事会では近藤氏を次期会長候補として一本化することを決めた。
6月16日の機構通常総会後の理事会で近藤氏が会長に就くことになるが、近藤氏は山本氏を会長代行として指名する公算が高い。かねてから近藤氏は山本氏とセットで機構運営を行いたいという考えで、官民一体の体制を望んだ坂本前会長の遺言はかろうじて実現されることになりそうだ
会長人事の迷走で隠れてしまっていた専務理事選びは、現在の北山憲武氏が退任見込みとされ時間との勝負となりそう。旅行代理店関係者の就任が取り沙汰されたこともあるが現在は消えている。「機構には簿外のカネがあったが、いつの間にか消えている」という関係者の話もあって機構の実務を取り仕切る専務理事ポストに誰が就くか、会長人事以上に注目されている。