在札幌米国総領事館とNPO法人札幌ビズカフェ(代表・宮田昌利サンエス電気通信社長)は22日、食と農の未来を考えるディスカッションを札幌市中央区のコワーキングスペースドリノキで開催した。米国務省が主催している交流プログラムであるインターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)に参加した十勝毎日新聞記者の報告や道内で農業・食関連の新ビジネスを展開している2団体の事例も報告された。約30人が参加した。
IVLPは70年続いている国際的なリーダー育成支援の交流プログラム。日本との間では60年に亘って毎年開催されており作家の村上春樹氏なども参加したことがある。今回は、昨年11月から3週間、米国の食の安全・安心について視察・研修するコースに道内から参加した十勝毎日新聞の眞尾敦政治部記者が『米国研修で見た食と農の今』をテーマに講演。
十勝はTPP(環太平洋経済連携協定)で最も影響を受ける地域で眞尾氏の問題意識もそこにあったが、「米国の農民の殆どがTPPを知らなかった。現地に入った時にソルトレイクシティで主席交渉官会合があったが、殆どニュースになっていない。日本と同じく米国でも情報開示がされていないようで議員たちも中身を知りたがっていた」と述べ、「コロラドファームビューローの会長は肉牛農家だったが、彼はTPPへの期待が大きかった」と関心がある農家は一部であることを報告した。
また、オーガニック(有機)が年間3兆3000億円とこの10年間で3倍の市場規模になり、「地元の新鮮なオーガニックを買う“バイ・フレッシュ、バイ・ローカル”の習慣が広がっている。生協に当たるデイビスコープの店舗では割高でも売れていた」と説明した。
その後、北海道の事例報告として一般社団法人アースカフェの鈴木善人代表理事が『畑と食卓をもっと近くに』をミッションとした農と食に関わるネットワーク形成事業について紹介、Neeth代表取締役で東京農大非常勤講師の石井宏和氏が6次化リーダー養成講座の概要を報告した。
参加者を交えたディスカッションでは、「日本ではスーパーなどで農産物の安さを競っているが、これでは地域で農産物を作れなくなる。デンマークでは、農は福祉と環境の機能があるとして農産物が多少高くとも買っている。消費者が農について真剣に考えているからだ」という意見が出ていた。