プロ野球北海道日本ハムファイターズが進める新ドーム球場を「きたひろしま総合運動公園」の予定地に誘致することを正式に表明した北広島市上野正三市長(68)。現在の札幌ドームに通い慣れた札幌の日ハムファンにとっては不便な場所という印象で実現可能性は低いと思われるが、上野市長は侮れない政策手腕の持ち主。不可能を可能にする道を切り拓く感度が高い。「遠くて不便」の評は切り崩されるかもしれない。(写真は、北広島市の上野正三市長が誘致表明した日ハムドーム予定地の一角)
自治体として誘致表明一番乗りを果たした上野市長。多くの関係者が札幌ドームとの“仲直り”の可能性を捨てきれない中で、上野市長はきっぱりと誘致の姿勢を示したことは日ハムにとっても好ましいことに違いない。
候補になっている「きたひろしま総合運動公園」は、市が運動公園として整備しようとしていた地区。財政難で整備は計画のままで凍結されており、現在は市庁舎新築の廃材や残土の仮置き場として一部使用されているが大半は緑の残る土地だ。北広島高校の北西側に位置しJR北広島駅からは約1・5㎞でやや遠いことがネック。
日ハム側は新ドーム建設に15~20ヵ所の候補地があるとしているが、交通の便ということでは北広島市は不便の部類に入る。実際に現地に立ってみると、「こんなところにドームが建つのか」と完成後の姿をイメージできない。不可能だという思いを多くのファンが抱くに違いない。
しかし、上野市長はこうした不可能に思えることを可能にしてきた市長でもある。代表的なこととして札幌市との境界付近にある大曲地区に一大ショッピングゾーンを作ったことが挙げられる。市街化調整区域を工業地域にして工場を誘致、さらに近隣商業地域に用途変更して札幌と北広島の商業施設の境界をなくし買い物客の動線を繋げた。隣接する輪厚(わっつ)地区にも市内6つ目となる工業団地を造成、その政策的な感度に基づく実行力は道内首長の中でトップ級。
上野市長は、実現こそしていないが、世界的な家具インテリア小売りの「イケア」誘致のため自ら日本法人に乗り込んだこともある。もっと言えば、日ハムのグループ会社である東日本フードの加工部が球場誘致場所のJR千歳線を挟んだ向かい側にあり日ハム本体との関係も濃いようだ。
こう見てくると、上野市長の手腕に札幌市の秋元克広市長(60)も安閑としていられない。ただ唯一のネックは北広島市が広島県人によって開拓されて発展したマチという点。カープファンが道内の他地域より多いということはないにしても新球場の通称が「日ハム・キタヒロシマドーム」になる可能性がないわけではない。日ハムの新拠点に他球団を想起させるヒロシマの文字が入ることに抵抗感が出てくるかも知れない。上野市長の3期目は来年7月まで。不可能を可能にしてきた上野市長の真骨頂再びとなるか――。