建築企画設計のディール企画(本社・札幌市)社長、野呂幸司氏がNHKラジオ深夜便で自らの半生を語ったコーナーが5月20日、21日に再放送される。いずれも午前4時からの40分間。50年前の学生時代に旭岳の冬山登山で遭難、一緒に登った仲間たち10人が次々と命を落とす中で唯一生き残った野呂氏の壮絶な体験談やその後の人生について担当ディレクターが聞き出す。2月に放送したが、アンコール要請が強く再放送することになった。(写真は、ディール企画野呂幸司社長)
 
 野呂氏は戦後樺太から引き揚げて函館に住み、高校時代から山岳部に所属。道教育大函館分校へ進学後も山岳部に所属、リーダーとして冬の旭岳登頂を目指したが悪天候で遭難。パーティ11人のうち野呂氏1人が生還した。しかし、野呂氏の両足は凍傷で壊疽。両足首から切断せざるを得なかった。
 仲間を失い、自身も両足首を失った失意の中で野呂氏がどう立ち直っていくかをディレクターは克明に聞いていく。
 
 野呂氏は、遭難の様子について一切口にしなかった。作家の新田次郎氏も「話を聞かせてほしい」と来たこともあったが野呂氏は応じなかった。遭難から45年経った4年前になってようやく心の整理が付き、野呂氏は札幌在住の作家、川嶋康男氏の取材に応じて出版されたのが『凍(しば)れるいのち』(柏艪舎刊)。
 
 NHKラジオ深夜便の担当ディレクターもこの本を読んで、野呂氏の過酷な体験を広く聴取者に伝えたいと接触、野呂氏が応じて放送されたのが2月19、20日の同番組の人気コーナー『明日への言葉』だった。
 
 札幌グランドホテルの一室を使った収録には4時間ほどかけたという。それを40分ずつ2話に編集して放送された。
 NHKラジオ深夜便は、200万人の聴取者がいる深夜の人気番組で、放送後には手紙や電話、メールで学生から90歳代まで多くの反響があった。中には自殺を図ったが一命を取り留めたものの、不眠症に悩まされている若い女性から野呂氏の下に電話があり、「もう一回やり直したい」と伝えてきたという。多くは「勇気をもらった」というものだった。
 
 再放送は5月20日、21日の午前4時からのコーナー『明日への言葉』。タイトルは『10人の山仲間へ 償いの50年』。


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