2023年8月31日、北海道で愛されたお店が相次いで閉店した。札幌市では「エスタ」に「パールモンドール南6条店」、函館市では「テーオーデパート」、小樽市では「コロンビア」ーー多くの人たちがそれぞれのお店の歴史を形づくり、地域に潤いを与えてきた。今年の夏の終わりは、一つの時代の終わりでもあった。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください。

(写真は、ライトダウン式を行った「エスタ」)

 札幌駅前の「エスタ」は、45年間の営業を終了した。北海道新幹線開業に向けた、駅前再開発の一環としてスクラップ&ビルドされるものだが、「エスタ」ほど世代を超えて愛された商業施設はなかった。市民・道民、ショップスタッフ、エスタ関係者が一体となってつくり上げた、無形の芸術作品ともいえるような風格を漂わせていた。前身の「札幌そごう」が、無念の退場をせざるを得なかったことを受け、多くの人たちの支える気持ちが建物に新たに息吹を吹き込んだ結果として、市民・道民に等身大の商業施設が出来上がっていった。建物は生き物であることを実感させるような商業施設は、札幌市内でも数少ない。まさに札幌、北海道の自画像ともいえる商業施設だった。

 最終セレモニーは、1978年9月1日のオープン時と同じ2階ペデストリアンデッキ(高架型歩道)で行われた。エスタ店の松井歩店長は、「エスタは、45年前の9月1日に北海道初の駅ビルとしてオープンしたが、45年後のきょう、最後の日を迎えることになり、寂しい気持ちでいっぱい。親子3代にわたってエスタ店をご利用いただくなど、いろんな思いが詰まっているお店であることを実感する。多くのお客さまに育てられて、日々成長し、より魅力的な商業施設になっていった。ここにあるエスタは、皆さまのもの。皆さまに大切に育てられてきたエスタへの思いがあれば、建物がなくなったとしても、次の新しい建物に飛んで行って、大きく花咲くことができると思う。今日が最後ではなく、今日からまた新たな一歩を踏み出す思いで、今日の閉店を迎えたい」と挨拶した。22時、アーティストのMs.OOJAさんとショップスタッフらが『見上げてごらん夜の星を』を合唱した後、屋上サインや外壁サインのライトダウン式を行い、最後の営業を終えた。

(写真は、最後の営業を迎えた喫茶「コロンビア」)

 札幌の隣町、小樽市でも愛され続けた喫茶コロンビアがこの日に閉店した。1948年、花園銀座商店街に誕生したこの喫茶店は、店内のジャンデリアや赤いソファなど、ノスタルジックな古き良き時代の喫茶店の姿がそのまま残っていた。現店主が高齢のため75年間の歴史を閉じたものだが、最終日には多くの小樽っ子が訪れ行列をつくるなど、閉店を惜しんだ。

(写真は、「テーオーデパート本店」)

 函館市の「テーオーデパート本店」も、この日が最終営業日だった。「テーオーデパート本店」は、1962年に開店したデパートで、函館の中心地五稜郭梁川地区のショッピング、憩いの場として親しまれてきた。ファッションから暮らしの品々まで、幅広い世代のニーズに応えたデパートだった。閉店の理由は、少子高齢化に伴う世帯数の減少、専門店の台頭などによって売り上げが減少したこと。コロナ禍で主力の衣料品販売が不振となったことも追い打ちをかけ、この日、61年間の役割を終えた。

(写真は、「パールモンドール南6条店」)

 札幌市内では、老舗洋菓子店「パールモンドール南6条店」も閉店を迎えた。北海道の洋菓子発祥の店、小樽の「館」で終業を積んだ創業者が、お店を開いて52年、嗜好の変化や施設の老朽化で創業者子息の現代表は、閉店を決めた。
 例年にない暑さを経験した北海道の今年の夏は、間もなく終わる。地域に根差したそれぞれのお店も夏とともに去り、北海道の一つの時代が終わる。


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