街角の風景は、建物や店舗、行き交う人たちによって形づくられる。普段はあまり意識しない街角の風景は建物、店舗の存在が大きな役割を果たし、私たちの印象に残って記憶に刻み込まれる。建物や店舗が新しく生まれ変わると、街角の風景も変わり、私たちの記憶も変わる。そんな移ろいゆく街角の風景を追ってみた。(写真は、札幌市北区新琴似8条13丁目にある旧・東京靴流通センター新琴似店)
札幌市北区新琴似8条13丁目の新琴似四番通沿いにあるこの建物は、東京靴流通センターの新琴似店だった。2022年6月19日に閉店したが、建物には今も店舗の名前の跡が残っている。東京靴流通センターは、チヨダ(本社・東京都杉並区)が展開している靴店舗の全国チェーン。北海道には1977年、北海道靴卸センターとして出店が始まり、1979年に現在の東京靴流通センターにチェーン名を変えている。全国に約520店舗あって北海道は新琴似店閉店で28店舗になった(別ブランドのSHOE-PLAZAは道内22店舗)。
新琴似店は、1996年頃に建てられたとみられる。大きな看板に低価格をイメージさせる店舗名は、ストレートに買い物客の購買心理に伝わってくる。チヨダのこうした分かりやすく訴求するチェーン戦略は、同社が手掛けた玩具チェーン、ハローマックでも生かされた。メルヘンチックな城をイメージした店舗は、一時期全国500店舗までになったが、時代の変化に対応できず、こちらは2008年には全店が閉店した。北海道では、ゆで太郎北37条店(札幌市東区)、FIT365(同市豊平区)などがハローマックの痕跡を残している。
東京靴流通センター新琴似店が閉店してから、もうすぐ2ヵ月。シャッターが下ろされ、ひと気のない店舗周辺は、時間が止まったような空間が広がっている。新たなテナントが入るのか、それとも新しい建物に生まれ変わるのか、店舗の消長が街角の風景を変えていく。