味付けジンギスカン発祥の地と言われる滝川市。同市の北に当たる江部乙町で、本店と支店の2店舗を展開していた羊肉製造販売の「小林ジンギスカン」が、10月末で約60年の営業を終えた。こじんまりとした販売店ながらも全国にファンを持つ味付けジンギスカンの老舗。地域だけでなく全国から閉店を惜しむ声が出ている。
(写真は、「小林ジンギスカン」の支店=上と本店)

「小林ジンギスカン」の創業は1959年、今年で62年になる。創業から20年は個人経営で、法人化してから40年が経過する。ラムやマトンの羊肉をリンゴや玉ねぎ、生姜、醤油などで作るタレに漬け込んだ同社のジンギスカンは、創業以来のレシピを変えずに手作りで製造してきた。

 30年ほど前には、国道12号線沿いに支店も開設、滝川市発祥で北海道を代表するジンギスカンブランドで飲食店も展開する「松尾ジンギスカン」の陰に隠れがちだが、地域では知る人ぞ知る地元ブランドとして成長してきた。地元に住む人たちの子息が滝川市を離れて札幌や道外に住むようになっても、「小林ジンギスカン」の味が忘れられず、通信販売やネット販売で取り寄せるケースが多く、友人知人を介して「小林ジンギスカン」は、まさに口コミで広がっていく地域ブランドだった。

 閉店を決めたのは、今年の夏頃。店主で2代目オーナーの朝比奈茂夫さん(73)は、「後継者がおらず、私の健康状態も考慮して閉店を決めました。いずれは閉店しなけれはならないという思いを持っていましたが、設備が老朽化してきたこともあって決断しました」と話す。閉店を公にしてからは、注文が殺到。朝比奈さんを含めて3人で注文をこなすだけで精一杯。「もう、とんでもなく忙しかったですし、びっくりするほど売れましたよ。多くの人が残念がってくれて、感謝の気持ちでいっぱいになりました。あらためてお客さまに支えられて60年続けられたことを実感しました」と朝比奈さん。

 閉店した「小林ジンギスカン」だが、その報を聞きつけた業界関係者が味の継承を打診してきているという。「どうなるか分かりませんが、ひょっとしたら『小林ジンギスカン』の味は継承されるかもしれません」と朝比奈さん。先代が作り上げた味を途切れさせたくない思いと、親族以外が継承することへの不安がないまぜになった表情で話してくれた。



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