道内民放テレビ局の12月スポットCMが活況だ。局によってはスポットCMの枠が目一杯で、新たに枠取りができないほど。活況に見えるテレビ向け広告だが、大半が東京キー局から振り分けられたもので道内の広告需要が盛り上がっているわけではない。不況下の活況は、地場広告代理店の淘汰を加速することになるかも知れない。


道内民放各社は、東京の余波を受けてCM収入が盛り返している。ある広告代理店は、STVでスポットCMの枠を取ろうとしたら2本の枠しか残っていないと言われたという。道内民放のテレビCMは、多くが東京キー局から振り分けられてくるもので番組の合間に流すスポットCMのおよそ6割が東京から流れてくるという。
スポット枠が取りづらくなっているのはキー局で言えば、日本テレビとフジテレビ。道内のSTVとUHBだ。道内広告代理店、メディアコムの伊藤正浩社長は、「スポットCMは確かに増えているが、どちらかというと薄利多売の傾向が強い。キー局から配分されているケースが多く、道内企業のスポットCMが増えているわけではない」と言う。
また、インサイトの浅井一社長は、「クライアントの中には、新聞広告からテレビCMに切り替える動きがある。新聞の純広の効果は薄れてきている。以前は、新聞の純広は信頼性が高く効果があったが、今は消費者が商品をネットで調べて自分で効果を調べてから買う傾向が強い。即効果の出る広告としてテレビのスポットCMが伸びているのではないか」と分析する。
道内全体の広告需要は依然として減少しており、減少するパイの中で新聞からテレビへの移動が起こっているに過ぎないという。
一見、活況に見える広告業界だが、少ないパイを取り合う構造に変わりはない。
かつて道内広告代理店業界は、上から潰れていく傾向があった。協同広告社、パブリックセンター、オービスなど地元ナンバーワン代理店がドミノのように倒れていく不思議なジンクスがあった。ある道内代理店の社長は、「この傾向は現在も変わっていないのではないか」と強調する。
電通北海道や博報堂といった大手の現地子会社や北日本広告社などの新聞社系を除いた地場代理店には、「岩泉」、「新生」、「ノヴェロ」、「インサイト」、「メディアコム」、「ピーアールセンター」、「ニトリパブリック」などがある。
各社とも生き残りのためにあの手この手を繰り出している。「ピーアールセンター」は、ダウンサイジングで年商20億円でも生き残れる体制を整え、「ニトリパブリック」も効率の悪いものを手放して利益率を高めている努力をしている。
また、「インサイト」はインターネット通販のサイトを買収、「メディアコム」は今後の需要拡大が見込めるデジタルサイネージ広告に取り組むことにしている。
インサイトの浅井社長は今後の広告代理店業界について、こう結んだ。
「広告代理店業界は変わる真っ只中にいる。我慢して嵐が過ぎ去るのを待っている時期ではないし、ここを乗り越えないと生き残れない」
(写真は、12月のスポットCM枠が目一杯のSTV本社屋)

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