現役の教師や教育関係者、そのOBらで組織する北海道師範塾(吉田洋一塾頭)は、12、13日の2日間、ホテルライフォート札幌で「教師の道」冬季講座を開催した。教育現場の課題であるいじめの問題や不登校児童について報告があったほか会社経営者から経営者が求める人材、社会人教育について講演が行われた。現役教師や教師を目指す大学生など約60人が参加、活発な質疑応答も展開された。(写真左から講演する下田好行氏と矢口正人氏)
 
 12日の講演では、まず下田好行明治学院大心理学部教育発達学科教授が『教師の職能成長と暗黙知~教師の創造性とエンパワーメント~』と題して講演。
 
 下田氏は、学ぶことの必要性が学校では教えられておらず学びが実社会とどう繋がるかが児童生徒に実感できていないとし、自身の体験を披露。「短大で講義をしたこともあるが、教材を使って話しても学生の私語が収まらない。注意しても3分と持たなかった。どうしてだろうと自問しつつ、ある日自分で教材を作ってみた。学習することが実社会でこう役立つなど自分で咀嚼しながら話したら学生たちの私語がなくなったばかりか、活発に意見交換ができるようになった」と述べ、「教師は教材を問い直す目を持った方が良い。教材をただ教えるだけでなく、教材の言おうとしていることを自分で理解し、自分で教材を作るくらいの力量がないと児童生徒、学生に学ぶことの必然性を伝えることはできない」と強調、教師は教材にどう向き合い、如何に教材と格闘するかが教師の第一歩だと訴えた。
 
 下田氏はテレビで売れっ子の池上彰氏を引合いに出し、「池上氏は点の現象の奥にある物事の本質を分かり易く伝える。視聴者は『ああ、そうだったのか』と目からうろこが落ちるように理解する。教師が教材を自分のものにするというのはそういうことだ」と語った。
 
 続いて、元道警幹部で現在、矢口法務事務所長を務める矢口正人氏が『青少年の問題行動の背景と現状』をテーマに講演。矢口氏は道警捜査一課勤務のころに少年の殺人事件なども担当、青少年の事件の背景には孤独や寂しさが根っ子にあると指摘。事件を起こした少年たちに必ず問うようにしていたことは、今までで一番楽しかったことは何か、一番悲しかったことは何かの2点。ほぼ共通して出てくるのは幼児期の体験だったという。
 
 矢口氏は3Kがネット社会の犯罪に繋がるケースが多いと述べ、「3Kとは、携帯、カメラ、金融機関の口座のことでそれに関与しない犯罪はないほどだ」と語った。
 
 犯罪捜査で数々の悲しい現場を見てきた結果、矢口氏が辿り着いた結論は次のようなもの。「壁にぶつかったとき、頼れる人、甘えられる人を持つこと。また、耳に痛いことを言ってくれる友人も大切にしないといけない。一つの壁を越えてもまた壁はやってくる。その時は一時退却することも選択肢に残しておく。最後はこれがあるという心の余裕を持つことはとても大切」と訴え、社会も失敗に寛容であるべきと強調していた。
 
 冬季講座では、その後7人に分かれてグループ協議が行われたほか、13日にはキャリアバンク佐藤良雄社長や北海商科大学堂徳将人教授、岩見沢市学校適応指導教室の佐藤恵三室長の講演があった。


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