北海道大学の名和豊春総長の解任に伴い実施される総長選の教職員による意向投票が28日行われ、即日開票された。総投票数1177票のうち473票で1位だったのが宝金清博氏(65、北大保健科学研究院特任教授)、369票で2位だったのが横田篤氏(63、北大農学研究員教授)、335票で3位だったのが笠原正典氏(64、総長代行・副学長)だった。(写真は、北海道大学正門)
投票は、講師以上の教員、課長補佐以上の職員、合わせて約1500人が対象で1177人が投票した。得票率は宝金氏40%、横田氏38%、笠原氏28%。宝金氏の票が伸びたのは、医学部、歯学部、保健科学研究院のほか理学部票も多かったためとみられる。前回までは過半数の得票を得るまで意向投票を行ったが、今回からは過半数に届かなくても投票は1回だけになっている。
投票率は約78%で、名和前総長が726票を獲得した2016年12月の意向投票より、4ポイント上昇した。 今後のスケジュールは、9月1日に総長選考会議(議長・石山喬日本軽金属ホールディングス元会長、他委員は末尾に記載)が総長候補者へのヒアリングを行い、2日に同会議が総長予定者を決定、文部科学省が任命する。
総長選考会議は、意向投票権を持つ教職員を対象にした8月18日の公開質疑と28日の意向投票結果、さらに9月1日の同会議による候補者ヒアリングによって総長予定者を決定する。これまでは、意向投票で最も得票数が多かった候補者が同会議で総長に選ばれなかったことはないが、今回について石橋議長は、組織運営の能力を重視するとして、2位以下の候補者を選ぶ可能性にも言及している。
18日に行われた公開質疑の中で、文科省の運営交付金や学費等以外の財務基盤強化について、各発言者の要旨を掲載する。
宝金氏
「大学が生産したものの販売や大学のブランドやネーミングライツ、不動産運用収入、知財収入、ベンチャーキャピタル収入(成功報酬など)が必要です。そのためには透明性の高い審査、監査など規定を順守する実務専門家が必要になります。最近、北大は非常に素晴らしい案で留学生宿舎を作ることになったようです。一部不透明ではないかという意見が出て残念に思っていますが、いずれにしてもこうしたことが今後の大学経営には重要です」
横田氏
「北大自身の投資会社、北大ベンチャーキャピタルの設立によって新たな収益創出を考えています。既存の機能強化促進事業を活用、分野横断型、文理融合型の提案を積極的に採用します。そのことによって部局間の垣根が下がり一体感が醸成され、外部資金の獲得も促進されてきます。ロバスト農工連携のような産学官プラットフォームを形成して学内外の共同研究を獲得していく」
笠原氏
「すでに民間出身の財務担当者や経営改革担当理事を配置したほか、東京オフィスにはファンドレイザー(社会貢献と発展のため活動資金を集める専門資格者)を配置しています。共同研究の契約額を年間30億円以上とするほか、ベンチャー起業、アントレプレナー(起業家)教育を強化・支援、株式収益を確保するとともに本学が保有する不動産を積極的に活用することを考えています」
2020年度の総長選考会議の委員は次の通り
議長 石山喬氏
委員 横山清氏(アークス社長)/浅香正博氏(北海道医療大学学長)/長澤秀行氏(帯広畜産大学顧問)/松谷有希雄氏(国際医療福祉大学副学長)/山本文彦氏(北大文学研究院長)/堀口健雄氏(北大理学研究院長)/吉岡充弘氏(北大医学研究員長)/西邑隆徳氏(北大農学研究員長)/中垣俊之氏(北大電科研所長)