学力低下やいじめ、不登校など学校教育には問題が山積しているが、そうした教育現場で日々子どもたちと向き合っている教師の悩みや思いを共有し、共に成長していくことを目的にした「北海道師範塾」が3~4日の両日、札幌市豊平区の北海きたえーるで設立以来2回目となるセミナー「教師の道」を開催した。道内各地の現役教師や教員採用1次試験に合格した5人を含む約40人が参加、教育現場や企業、マスコミ、地域から見た教師のあり方や教育への期待を共に学んだ。(写真はセミナーで講演する原一夫氏)

北海道師範塾は、道教育庁OBや養護学校、高等学校などの校長OB、現役校長、教師などが理事を務め昨年9月に設立。学校現場で起きている様々な問題を、現役教師や教師を目指す大学生などと共有し解決への糸口を探る参加型のネットワークで、今年1月に初のセミナーを開催し今回は2回目。

3日の開講式は国歌斉唱と「師範塾教師の道宣言」を参加者全員で唱和。塾頭の吉田洋一氏(現社会福祉法人北海道社会福祉事業団理事長、元道教育長)は、開講の挨拶で、「師範塾はようやく大地から芽が出た小さな取り組みだが、やがて大地に根を生やして北海道の教育を変えていく力になれば良いと願っている」と挨拶した。

セミナーでは、第1講話で歴史と国語の教師を67年間務め、現在は北海学園監事を務める原一夫氏が講演。原氏は、戦後教育を顧みて、「戦後の国づくりは真っ当だったのか。モノさえあれば、カネさえあれば、自分さえよければという風潮の片棒を教育は担いできたのではないか。自由、平等、人権、個性という名の下、ブレーキ役の教育がその役目を果たしてきたのか」と自戒を込めて訴えた。

また、国旗掲揚や国歌斉唱はひとつのマナーであり、世界のどこの国でも行っていると述べ、「思想信条、内心の自由とごっちゃにするからおかしくなる」と自論をアピールしていた。

原氏は魅力ある授業は問題作りから始まるとし、「授業は教師の生命そのものです。授業がしっかりしたものであれば、学級崩壊などの7割はなくなる」とした。

さらに、2001年に道内の教育界や経済界が一体になって教育を考える「教育改革道民協議会」について触れ、「国に対してはゆとり教育から学力重視の教育へ、さらに教育基本法の改正を訴えて2つの課題は実現。道教育庁には主任制や4・6協定など3つの問題を指摘してきたがいずれも解決。これら5つの問題がクリアされ、偉大なる教育者であった戸田一夫さん(元北電会長、道経済連合会会長)も喜んでいた」とエピソードも披露していた。

続いて、企業から見た教育について柳月ホールディグスの取締役人事部長の深瀬光正氏が講演。社員教育を例に「社員教育をしても2~3ヵ月で元に戻ってしまう。社員教育で大事なのは方針、目標、目的が明確になっていること。それらが共有されてはじめて社員教育が浸透する。また、達成結果について公平、公正な評価の仕組みがなければいけない」とも述べた。

深瀬氏は新入社員研修を23年間担当しているが、「学生の就職活動を見ていると、自分が何のプロになろうとしているのかが決まっていない学生が9割、残り1割が明確な目的意識を持っている。学業と将来の進路がもっと密接に繋がってもいいのでは」と述べ、「勉強の目的と進路のつながりが薄い気がする」と学校現場に親身な進路相談が必要と注文した。

そのほかに、近田勝信留萌高校校長が「校長が変われば学校が変わる」、橋爪里佳札幌市立北陽小学校教諭が「私の教育実践」、小林基秀道新記者が「マスコミから教育への期待」、相沢昌之長沼町教育委員会教育長が「地域からの教師への期待」をテーマにそれぞれ講演した。

北海道師範塾では今後もセミナーを続けていくと共に様々な情報の提供が受けられる塾生の募集も行っている。
詳しくは、http://www.kyoshinomichi.jp/rinen/index.html



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