北翔大学を運営する学校法人浅井学園の新理事長に就任した鎌田昌市氏(70)が、今後の大学運営の指針などについて明らかにした。実学を重視した大学として社会に役に立つ人材を養成する役割をより深化させるとともに、ビジネスマインドを持った卒業生を社会に送り出し大学差別化に積極的に取り組む考え。
 鎌田氏は元道教育長。鈴木弘泰理事長(元副知事)の後任として3月11日の理事会で新理事長に選ばれた。(写真は、鎌田昌市新理事長)
 
 鎌田氏は道庁退任後に、北海道社会福祉事業団理事長を約7年間務めて2年前に退任、理事長在職中から北翔大学の監事を務めていた。社会福祉事業団時代は、知的障害者などの施設運営などを通じて福祉分野での経験を積んだほか、道庁の外郭団体だった同事業団を民間へ移行させるなど改革を実践してきた実績がある。

 以下、鎌田新理事長との一問一答。
 
――大学の入学生確保は各大学に共通する課題だが、どう差別化して受験生に選ばれる大学にするのか。
 
鎌田 当法人の短大と大学を合わせた入学生は2011年度で616人。定員は680人で充足率は90・6%。入学定員を毎年減らしてきているが、入学生の減少傾向はここ数年続いている。
 
 受験生が当短大や大学の教育形態や中身について、どんなことを期待しているかを十分に知りながら大学経営をしていかなくてはならない。変化の激しい社会だから、その変化に対応できる大学でなければならない。
 
――授業料の免除など各大学ともに入学生確保に躍起だが――。
 
鎌田 当大学も授業料免除などの制度は早くから導入している。確かに目先の仕掛けで学生を確保する方法はあるが、これが普遍化してみんな模倣すると同質化してしまい差別化ではなくなってしまう。目先の仕掛けをするなら、常に新しい仕掛けが必要になり本質的な差別化には繋がらない。
 
――浅井学園と言えば専門学校ドレスメーカー学院を擁し、実学のイメージが強い。
 
鎌田 ドレメは70年以上の歴史があり社会に即戦力で役立つ実学の伝統は、大学にも息づいている。生涯スポーツ学部の卒業生は医療機関でもリハビリに必要な運動指導の専門家として重宝されているし、教員になる卒業生の比率は道内私学では一、二を争う。特別支援学校の教員になる卒業生も多い。
 
 卒業してどれだけ社会に役に立つか、それが経営を左右する鍵になるし社会に信頼される大学になるための最大の課題だと思っている。
 
――福祉分野ではどんな手を打っていくのか。
 
鎌田 福祉分野の人材は、社会の需要こそ高いが就職に関しては低落傾向だ。短大でも専門学校でも同じライセンスしか得られないのであれば4年制大学としての差別化し、ひと味違う人材を養成しなければならない。
 
 4年制として期待できるのは、福祉の事業を起こすようなビジネスマインドを持った起業のスキルを身に付けることが挙げられる。私は、福祉の分野でも今後起業のニーズが高まってくると見ている。福祉は、これまでのハコモノ福祉から地域の中でハコモノ同士を如何に結び付けていくかというソフトサービスが不可欠になってくるだろう。それぞれの福祉の機能が分散されて細分化していく流れの中で、事業を起こすスキルを身につけた人材には活躍の場が広がる。
  
――社会福祉の専門家であると同時にビジネスを発掘したり創造したりする人材ということですね。
  
鎌田 ビジネスチャンスを掴んで起業する意欲、能力を備えた人材は、社会的ニーズに合致してくるだろう。
 
――浅井学園は元理事長の補助金不正取得や刑事・民事の事件もあった。鈴木弘泰前理事長の下で事件の後遺症も払拭され、文部科学省からの補助金も正規に戻ったが、鎌田新理事長としてどう教訓を生かしていくのか。
 
鎌田 理事者側と教授会側が学校経営の両輪として機能している。学長は4大と短大の2人いるが、理事長の私と3人で良くディスカッションをしており、お互いに意思疎通することが一番大事だと考えている。経営側と教授側が役割分担、連携関係をとっていくことが、元理事長による不祥事の教訓だろう。
 
――最後に来年度に向けての学部学科編成について。
 
鎌田 短期大学の人間総合学科をライフデザイン学科として再編成する予定にしている。


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