道内36大学の2010年3月末の就職率は、前年同期よりも0・2ポイント減の84・9%で3年連続前年を下回った。全国平均の91・8%に比べて6・9ポイント低かった。道内企業や団体等の採用抑制が響いているようだ。
道内大学の就職率の中で、今までと違う現象も現れている。それは道外で就職する件数が減っていること。過去5年を取ってみると、07年には46%と半数に近い新規学卒者が道外で就職していたものの、それ以降は減り続け、10年3月では遂に40%を割り込み、わずか3年で10%も落ち込んでいる。


基本的には道内の大学を卒業した学生は道内で就職して、よく言われる“知の流出”に歯止めが掛けるほうが理想的なのだが、3年間で10%も減少することは異常。何が別の要因が作用しているのかもしれない。
新規大学卒者の就職難は、雇用のミスマッチが原因と言われている。働きたい職業と求人する職業との差が就職率を押し下げているというものだ。
しかし、ある大学の学長は、「雇用のミスマッチという以前に最初から就職しようという意欲のない学生もいる」と嘆く。大学という猶予期間を経れば、必ず就職しなければならないという常識は、今では通用しない。大学を出たら就職という当たり前のことが、当たり前でなくなっている現状がある。
その学長が続ける。
「説得して面接に行かせても、あくせく働こうという気持ちがないから当然落ちる。それが3回くらい続くと、『もう就職しない』と決めてしまう。親元にいれば食べるのに困らないし、たまに友人からアルバイトの紹介を受けて働く程度で良いと思っているようだ」
そんな大学生が増えているというから、ただごとではない。しかし、大学生を責めることでは問題は解決しない。つい最近、100歳以上の老人が所在不明というケースが全国で30件を超えるとか、乳幼児に対する虐待やネグレクトが史上最悪の件数にのぼったなど、社会や家庭で大切なものが失われている警鐘が鳴っている。就職に意義を感じない大学生が増えていることも、社会や家庭で失われているものが一つの現象として出てきているのかも知れない。

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