揺れる札大 異常な労使関係を生んだ大津秀人専務理事の独断専行

道内大学・教育

 夏の一時金支給を巡って労使が対立している学校法人札幌大学。1・98ヵ月から1・40ヵ月に一方的な一時金の引き下げを求める理事者側と「まず経営陣から率先して引き下げを」と主張する教職員組合。対立激化で一時金支給のメドは立っていない。理事者側の強硬策を主導するのは北洋銀行出身の大津秀人専務理事。今年5月、佐藤俊夫理事長が突然退任したのも大津氏の独断専行に嫌気がさしたという見方も出ている。IMG_6456(写真は、札幌大学の中央棟)

 札大の労使対立は3年前に続き2度目。前回も夏季一時金の支給を巡って紛糾、教職員組合が道労働委員会に斡旋を申請し、その後斡旋案を労使双方が受け入れたものの、理事者側は履行せずに就業規則も一方的に変更、夏季一時金の引き下げの既成事実化を図った。
 このため教職員組合は同委員会に救済を申請、同委員会は理事者側の行為を不当労働行為と認定し救済命令を出した経緯がある。この行為を巡っては札幌地裁でも係争中だ。
 
 今回の対立も3年前と同じ、夏季一時金の一方的な引き下げを巡ってのこと。前回の救済命令に対して理事者側は現在も応じていない中での理事者側の度重なる強硬姿勢に、「通常の労使関係では考えられない異常さ」(千葉博正札大教職員組合委員長)と組合側は態度を硬化させている。
 
 3年前の対立も今回の対立も、主導しているのは大津専務理事とされる。大津専務理事は、副学長で理事の1人の意見を聞き入れ2013年度から学部改革を実施、5学部を1学群に再編した経営状況の改善を図ろうとした。しかし、この改革はそれほどの効果を生まなかった。「このツケを一方的に組合に押し付けているだけ。教職員の給与に手を付けるならまず理事者側が率先垂範するのが筋」(千葉委員長)
 
 大津専務理事の年俸は1300万円とされ、3年前の“事件”の後も、学部改革の効果が見えなくても一切減俸されていない。
 その独断専行ぶりは、理事会の運営にも影を投げかけている。常勤理事会の開催はめっきり減り、大津専務理事の息のかかったコアメンバーのみの理事懇談会で物事が決まって行くようになったという。
 その中には、退任した佐藤理事長は入っておらず法人運営で理事長の意向は反映されない異常事態。組合側との交渉についても蚊帳の外だった。元副知事の佐藤理事長は09年8月に堀達也氏(元道知事)の後任として理事長に就任したが、大津氏が専務理事に就任した10年4月以降から理事者のトップ2には徐々に亀裂が広がって行った。
 
 佐藤理事長は、後任に付いて元道の公営企業管理者だった青木次郎氏に相談、後任に元道監査委員で札幌医科大学副理事長も経験した太田博氏に5月末の理事会でバトンを渡した。佐藤氏は最後の最後まで大津専務理事には話さず、正式退任する前日に切り出したという。理事者側のトップ2のスレ違いは極限まで高まっていたようだ。
 それもこれも大津専務理事の理事会を牛耳る専横体質が元凶。監事会も評議員会も理事会へのチェック機能がなく自浄作用は働いていない。18歳人口の減少で冬の時代を迎える大学で札大には大津天皇体制が生まれるのだろうか。

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