名古屋大学発ベンチャーのCraif(本社・東京都文京区)が開発した、尿によるがん早期発見の検査キットを使ったがんの検診、診断、治療のサイクル確立を目指した産学医連携共同体が2月27日、全国に先駆けて北海道でスタートした。がんの早期発見、早期治療のモデルを北海道から発信していこうというもので、北海道大学大学院医学研究院や旭川医科大学も協力する。(写真は、産学医連携共同体「CRUSH-Cancer」の発足式。前列中央が発起人の加藤容崇医師=札幌市東区のEZOHUB SAPPORO BOOK LOUNGEにて)
(写真は、尿によるがん早期発見の検査キット「マイシグナル」)
産学医連携共同体は、「CRUSH-Cancer(クラッシュキャンサー)」と命名され、北斗病院の加藤容崇医師が発起人となって結成された。加藤医師は、3年前からCraifの開発した「尿中マイクロRNA解析によるがん早期発見」の検査キット「マイシグナル」を利用したがん診断、治療の共同研究を進めてきた。その過程で、尿1ccでステージ1のがんを発見できる「マイシグナル」の有効性が高いことに着目。検診から診断、治療にシームレスに繋げていくことが、がん死亡を低減していくには不可欠と判断、「CRUSH-Cancer」を構築することにした。
参加機関は、社会医療法人北斗「北斗病院」(帯広市)、社会医療法人元生会「森山病院」(旭川市)、医療法人社団静和会「静和記念病院」(札幌市西区)、Craif、サツドラホールディングス(本社・同市東区)の5者。「検診→診断→治療→回復」のエビデンスを積み重ねるため、旭川医科大学内科学講座消化器・内視鏡学部門の藤谷幹浩教授、北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室Ⅱ平野聡教授、同大学大学院医学研究院産婦人科学教室の渡利英道教授、同大学大学院医学院外科学講座呼吸器外科学教室の加藤達哉教授が、医療技術協力を行う。エビデンスを確認するまでの期間は、おおむね5年間を想定している。検査できるのは、卵巣がんや乳がん、肺がん、すい臓がん、胃がん、食道がん、大腸がん7種類。
参加医療機関で「マイシグナル」を提供するほか、サツドラHD傘下のサッポロドラッグストアー(本社・札幌市東区)が展開する「サツドラ」の札幌、帯広、旭川の各エリア約10店舗でも5月から「マイシグナル」を取り扱う。価格は5万3900円。自宅で尿を採取、常温で郵送すると2週間で結果が出る。リスク判定によって参加医療機関の受診を薦める。今後、連携共同体の加入医療機関も増やしていく。
発起人の加藤医師は、「生活者と接点のあるサツドラと協力することで優れた検査方法を広く社会に浸透させていきたい。がんを早期発見して、がんで亡くなる人が減るというエビデンスを集め、社会に有用な検査として認知されるようにしたい」と話していた。
※2023年2月28日記事一部修正しました。静和会は医療法人社団でした。お詫びして訂正いたします。