北洋銀行と北海道大学の包括連携協定事業のひとつである「市民医療セミナー」が9日、札幌市内の北洋大通センター4階のセミナーホールで開かれた。今年度に入って7回目となる今回は、北大大学院歯学研究科口腔診断内科学教授の北川善政氏が『口腔内の病気と予防』をテーマに講演、「よく噛むことによって肥満防止やストレス緩和、脳への血流量を増加させ認知症予防にも繋がる」と噛むことの大切さを訴えた。市民ら約70人が参加した。(写真は、市民医療セミナーで講演する北川善政北大教授)IMG_1791
 
 北川教授は、高齢者で歯が多い人ほど元気で全身の健康が保たれ、医療費の抑制に繋がっている具体例を北海道国保連合会の資料を基に紹介し、「日本人は口の中の健康とともに平均寿命が延びてきた面がある」と説明した。唾液にまつわることわざにも触れ、「“天にツバする”とか“唾棄すべきもの”とかマイナスイメージのことに使われるが、唾液は口腔内の環境を維持増進していくうえで不可欠なもの。飲むだけで老化を防ぎ外敵から身を守る効果がある」と述べ、インフルエンザの予防にもなるとした。
 
 唾液は1日1~1・5ℓ出るが、ストレスや緊張で分泌が減少、「私もこの講演で口の中がカラカラになります」と会場を笑わせ、「口の渇きは命の渇き。唾液腺や口腔粘膜のマッサージ、舌体操などが効果的」と訴えた。
 
 最近増えている舌痛症についても言及し、「舌の表面に痛みや異常感があるが、それに見合う病変が認められないのが舌痛症だが現代病とも言えるほど多くなっている。歯科治療を契機に発症する場合もあるが、家庭や人間関係の心理的社会的背景もあるようだ。ホルモン伝達物質の枯渇で痛くなるとも言われている」と述べた。
 
 そのほか、北大病院口腔外科での口腔がん治療の特徴や食道がん、臓器移植後の口腔ケアなどによって在院日数が10%以上短くなることなどを紹介した。
 
 今年度市民医療セミナーの最終回は来年1月20日午後1時半から北大大学院医学研究科がん予防内科学講座特任教授の浅香正博氏が『がんはどこまで予防できるのか』をテーマに同ホールで行われる。問い合わせは、北洋銀行法人部(011・261・2579)。


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