第77回 小樽スキー資料館 -日本スキー界の故郷、小樽の歴史-

連載 北のミュージアム散歩

 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第77回は、小樽市の「小樽スキー資料館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第77回 小樽スキー資料館
-日本スキー界の故郷、小樽の歴史-


小樽スキー資料館(正面)

 JR小樽駅よりバスで約20分のところに小樽天狗山があり、さらにロープウェーを利用して山頂まで行くと、小樽スキー資料館がある。1981年(昭和56年)、小樽のスキーの歴史と、小樽ゆかりのスキー選手の栄光を称えるために、北海道中央バス株式会社によって開設された。展示資料は、約100種400点に及ぶ。

 資料館の入口は、1998年(平成10年)の長野五輪で、ジャンプノーマルヒル(NH)競技と団体競技で金、ラージヒル(LH)競技で銀メダルを獲得した、船木和喜選手が使っていたスキー板と写真が飾っている。

 前に進むと、オーストリア将校テオドール・エドレル・フォン・レルヒ少佐と、北大ドイツ語講師ハンス・コラーの写真と説明がある。レルヒは、日本人に初めてスキーを指導した。コラーは、日本人の前でスキーの実演を披露した初めての人物である。
 そばに、樺太アイヌが使っていた、スキーの原型であるストーのレプリカがある。これは日本最古のスキーと言われる。
 小樽のスキーのはじまりは、大正の初期に、レルヒ伝来のスキー術講習を開いたものである。彼のスキー術は、小樽商科大学に連なる「地獄坂」を利用して、学生や一般庶民が滑った。これがきっかけで、小樽は早い時期から多くの市民によってスキー文化が浸透した、「日本スキー界の故郷」と言われる所以である。
 1923年(大正12年)、小樽で日本初の公式のスキー大会が開催。その時の様子を撮影した写真や、小樽のスキー選手及び関係者の写真が展示されている。そのそばに、柴田信一、秋野武夫、高橋次郎の胸像が掲げられている、小樽スキー界に貢献した重要な3人である。また、平成の時に活躍した北照高校卒のスキー選手のスキー板がある。


館内の展示物1:上の3枚の胸像は左から柴田信一、秋野武夫、高橋次郎の各氏

 小樽がスキー競技で、41人の五輪選手を輩出した「勝者の記録」と呼ばれるパネルがある。これは1928年(昭和3年)のサンモリッツ五輪のジャンプ競技に伴素彦選手が初出場してから、2010年(平成22年)のバンクーバー五輪のアルペン競技に皆川健太郎・佐々木明選手の出場までの、19回分の記録である。
 1936年(昭和11年)のガルミッシュ・パルテンキルヒェン五輪に競技役員として参加した秋野武夫は、後進を育成して五輪選手を育て上げ、小樽をジャンプ王国とし、日本にジャンプ競技を定着させた。そして、札幌五輪で青地清二選手がノーマルヒル競技で銅、レークプラシッド五輪で八木弘和選手がノーマルヒル競技で銀、長野五輪で船木選手が金2つと銀1つのメダルを獲得した。
 1931年(昭和6年)、小樽高等商業学校(現小樽商科大学)に「高商シャンツェ」が造られ、戦後は天狗山、潮見台、望洋台の3ヶ所にジャンプ台が造られた。現在、潮見台のみとなり、小中学生のためのジャンプ大会などで使用されている。
 スキー変遷の展示コーナーでは、過去に使用されたスキー板を展示している。ここから、スキーの板の変化と共に金具が進化した様子がわかる。
 冬季国民体育大会及び冬季五輪関係展示コーナーでは、参加した選手の写真やサイン、ゼッケン、メダル、カップ、スキー板、スキーウェア、靴、帽子、ペナントなどが並ぶ。ちなみに、冬季国体は小樽で過去に5回開催された。


館内の展示物2:オリンピック関連展示コーナー、左の写真は八木弘和選手

 隣は高松宮殿下ご愛用遺品の展示で、スキー板とストック、スキーウェア等がある。1928年(昭和3年)に北海道を訪れた秩父宮殿下が、北海道に適したスポーツとしてスキーの普及を推進するよう励まされた。その2年後に、札幌の荒井山スキー場で「秩父宮殿下高松宮殿下御来道記念大会」が開催。これが、第1回「宮様スキー大会」となったことが、紹介されている。


館内の展示物3:高松宮殿下愛用ご遺品

 隣接する「天狗の館」には、日本全国から収集した約700点の天狗面や巻物、天狗番付表などもある。また、「天狗山劇場」と呼ばれる天狗山の四季を表現した、約5分間のプロジェクションマッピングを見ることができる。

利用案内
住  所:〒047-0023 小樽市最上2丁目16-15
電話番号:0134-33-7381
開館時間:9:05頃~20:35頃
入 館 料:無料
休 館 日:ロープウェーの休止の日及び整備の日(4月1日~25日、11月4日~30日)
アクセス:JR小樽駅前から中央バス「天狗山ロープウェー線」を利用して、終点まで。ロープウェーを利用して、山頂へ(約5分)。

付近の見どころ
天狗山神社
 天狗山の山頂にある。猿田彦大神を祀っており、交通安全、商売繁盛、学業成就にご利益があるという。となりに、「鼻なで天狗さん」と呼ばれるブロンズ像がある。

文・写真:大渕 基樹

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