第61回 農業の実践教育の歴史を伝える -八紘学園資料館-

連載 北のミュージアム散歩

 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第61回は、札幌市の「八紘学園資料館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第61回 農業の実践教育の歴史を伝える
-八紘学園資料館-


八紘学園資料館(外観)

 札幌市豊平区月寒地区に「学校法人八紘学園北海道農業専門学校」がある。『八紘学園七十年史』によると、その歴史は昭和5年(1930)4月、栗林元二郎(秋田県出身)が開拓を志す農業者の育成を目指して、八紘学園を創設したことに始まる。以降、体験教育を主体とした特色ある教育システムを基本としつつ、その時々の国の移民政策などをも勘案し、海外での殖民・殖産に携わった人びとを含め多くの人材を輩出してきた。

 そうした八紘学園の歴史を伝えるのが「八紘学園資料館」である。地下鉄東豊線福住駅を出ると、国道36号を挟んで北側に約60ヘクタールに及ぶ八紘学園の敷地が広がっている。この敷地は、昭和5年(1930)に栗林元二郎が月寒地区の開発功労者吉田善太郎(旧豊平村農会初代会長)から買収したものだ。
 「八紘学園資料館」は、旧吉田牧場の畜舎とサイロ2基からなっている。畜舎は木造で、サイロの横と後ろに2棟がつながっており、サイロ2基は、札幌軟石積みの躯体に赤い鉄板葺きの屋根が乗った形に造られている。いずれも、周囲の牧歌的な風景と絶妙にマッチしていた。
 先ず、サイロ横の畜舎の正面玄関を入ると、真ん中の通路を境にして、左側には畜力に頼っていた時代に使用していたプラウなどの農機具類が、右側には、主に機械力に頼るようになった時代に活躍し始めたトラクター類が、それぞれ所狭しと展示されている。
 他には、バター製造、オートミールの加工製造、馬鈴薯の収穫、アスパラの缶詰製造などの機械、手動草刈り機、牛馬の飼育用具(飼馬桶、押切)などが目につく。


資料館1階(畜舎部分)入り口から見た館内光景

 サイロの後ろ側の棟に入ると、壁にサイロの壁が一部食い込んでいるのが見える。このサイロの中に入って眺めることはできないが、上部から牧草などを入れて貯蔵するものである。その他、この棟には、ウィスキーを製造したときの見本が展示されていた。当時は「日本洋酒株式会社」という会社まで設立したが、この事業は結局、成功しなかったようだ。
 サイロ横の畜舎に戻り、2階の屋根裏部屋も見学したが、ここでは特に畜力用のプラウが多く目についたほか、人力車や馬橇、栗林元二郎が所有していたと見られる鎧などが目を惹いた。
 資料館を見学した後、同じ敷地内にある洋館(栗林記念館)の石庭、野菜直売所、ポプラ並木なども歩き回り、学園で学んだ人たちの開拓や海外移住における苦労に思いを馳せた。


ウィスキー見本の展示光景

利用案内
所 在 地:札幌市豊平区月寒東1条13丁目3-6
電  話:011-851-8236(八紘学園)
開館日時:8時~17時
休 館 日:土・日曜日、祝日
入 場 料:無料
アクセス:地下鉄東豊線「福住駅」下車、徒歩15分
そ の 他:見学には事前許可が必要。駐車場あり。

付近の見どころ:
 さっぽろ羊ヶ丘展望台 所在地:札幌市豊平区羊ヶ丘1番地
「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士像の立つ高台から、草を食む羊の群れなどのいる草原や札幌ドームを見渡せる絶景地。
 営業時間 7・8月   8:30~19:00
      9月    8:30~18:00
      10月~4月 9:00~17:00
 交通機関 地下鉄東豊線福住駅から徒歩40分、同駅から中央バスで10分

文・写真 北国 諒星

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