大阪秋の政治決戦となった大阪市長と大阪府知事の同日選が27日投開票され、市長には大阪維新の会代表で前府知事の橋下徹氏(42)、府知事には維新の会幹事長の松井一郎氏(47)が圧勝してそれぞれ初当選した。維新の会が公約として掲げた都構想に向け大きな一歩を踏み出すことになった。二重行政の効率化や公務員制度の見直しなど財政再建と強い大阪再生に向けた民意が維新の会に集中、橋下、松井コンビを勝利に導いた。財政難や経済低迷が共通する北海道や札幌市は、遠く離れた大阪の”政変”から得るものは少なくない。(写真は当確後に会見の模様を伝えるNHK)
大阪府政と大阪市政は100年戦争と言われるほど根深いものがあった。府と市の壁は、行政のダイナミズムを奪い大阪の地盤沈下を招来した原因のひとつだった。橋下氏率いる維新の会は、一元的に大阪の成長戦略と大型インフラ整備が行える都構想をぶちあげて40年ぶりのダブル選挙を仕掛け、『大阪を変えるのか、変えないのか』と府民、市民に迫る、言わば住民参加型選挙の土壌を作り上げた。
結果は、市長選では橋下氏が75万票で現職の平松邦夫氏(63)を23万票あまり引き離して大勝。府知事選でも松井氏が200万票を超え、前池田市長の倉田薫氏(63)を80万票離して余裕の当選を果たした。
橋下氏は会見で、「府と市の壁を政治が変えてこなかった。これを取り払い補助金や職員の給与体制見直しも進める。都構想に向けて市と堺市で府で統合本部を作り詳細な制度設計を詰めていきたい」と述べた後、「市の中には政治を軽く見ている職員もいるし、政治をやりすぎる職員もいる。市長選を当選することが目的のセレモニーと見ている職員が多い」と市役所の体質を強く批判した。
大阪は、西川きよしや横山ノックのようにお笑いタレントが国会議員や知事を務めてきたこともあり、行政のトップを選ぶ選挙は人気投票の側面が強かった。今回の市長選、府知事選も橋下人気に支えられた面も否定できないが、都構想に象徴されるように国の法制度まで踏み込んだ行政のスリム化を訴え、教育改革にも狼煙を挙げるなど、大阪を変えたいという民意を作り上げた点でこれまでのタレント候補とは一線を画している。
大阪の変化を北海道にも、と言うつもりはないが、北海道には道州制特区など国と渡り合える政治・行政ツールが用意されている。しかし、現実は”温存”されているとしか思えないほど小粒で北海道を変える魂が入っていない。橋下人気に負けず劣らず高橋はるみ知事の人気は北海道では高い。橋下氏の政治手法は危うさを感じさせるが高橋知事は危うさからはほど遠い。高橋知事や上田文雄札幌市長が大阪の”政変”から学ぶことがあるとすれば、それは危うさを包含しつつも北海道を、札幌市を変えるという民意を醸成する課題を示すことだろう。