北海道経済同友会は9日、内閣官房社会保障改革担当室長の中村秀一氏を招いて「社会保障と税の一体改革」について講演会を行った。中村氏は97ページに及ぶ資料をもとに1時間30分講演、7月1日に閣議報告された成案の主要変更点などを報告、「今後、民主党代表に就く人によって変わってくるかも知れない」と見通しを語った。(写真は、講演する中村秀一氏)
中村氏は、1961年に国民皆保険・皆年金が始まって以降の社会保障の歩みや高度成長期の1960~70年代に骨格が完成している現在の社会保障制度のほころび、社会保障と税の一体改革が必要な背景と改革の具体策、工程、費用試算など図表をふんだんに使った資料をもとに説明。
「61年に社会保障制度ができたときの日本の人口は9400万人で平均寿命は男性65歳、女性71歳だった。最新の人口予測では2055年に9000万人を切って8993万人、その中で65歳以下は5000万人減少、65歳以上は1300万人現在より増える見通し」
「1人が一生に使う医療費は2200万円で、70歳までに半分、70歳以降が半分という内訳」――などと紹介し、社会保障費は06年の89・8兆円から25年には141兆円になり「年金はその期間の国民所得の伸びである1・4倍と同じだが、医療費は1・7倍、介護福祉は2・6倍になる」と見通しを示した。
社会保障と税の一体改革では、消費税を15年までに段階的に10%まで引きあげ社会保障改革の安定財源とすることが改革の姿。
成案は7月1日に閣議報告されたが、主要変更点として「15年を10年代半ばとすること、『経済状況を好転させることを』に『条件として』を加えること、さらに徹底的な歳出の無駄の排除の取り組み、デフレ脱却の取り組み――の二つの記述を加えることなどがある」とした。 なお、10年代半ばというのは14、15、16年を指すことを確認しているという。
ただ、菅内閣では国民新党が増税に反対しているほか菅首相の退陣による民主党代表選では社会保障と税の一体改革の考え方などに温度差があり、「代表に就く人によって変わってくる可能性もある」と述べた。