開拓当時の自然が残されている札幌市中央区の北5西8にある伊藤義郎・伊藤組土建名誉会長(札幌市商工会議所名誉会頭)の邸宅敷地を市が買い上げて全面保存するか、自然を一部残しながら開発を進めるかどうかを巡り、札幌市の上田文雄市長と伊藤氏が1月にトップ会談を行っていたことが明らかになった。伊藤氏は自然の一部を守りながらも民間に売却してマンション開発を進めたい意向を示し、トップ会談は不調に終わった。(写真左は伊藤義郎氏、写真右は上田文雄市長)
中央区北5西8にある伊藤義郎邸の敷地は約1・4haの広さがあり、敷地内には多くの樹木が生い茂り、豊平川の伏流水が湧き出るメム跡もあって開拓当時の自然が残されている。伊藤氏は、この自然の一部を守る一方で、住友不動産への敷地売却でマンション開発を進めたい意向を示していた。
この敷地全体は、第一種住居地域に指定されており容積率200%、建ぺい率60%、高さ33mの高度規制があるため、一昨年10月に伊藤氏は土地所有者からの提案として土地利用規制が緩和できる都市計画提案制度を申請。高さ90m程度の高層マンションが建築できる用途への変更を市に申し出た。
しかし、貴重な開拓当時の自然が数多く残されているため、市は昨年、樹木の植生や水脈、土壌調査を行った。この調査結果も踏まえながら昨年10月には、北海道自然保護協会は市に伊藤邸敷地と住居を保全するため買い上げ要望書を提出、さらに指定文化財として全面的に保存する陳情も市議会に対して行われていた。
そうした中で行われたのが上田市長と伊藤氏とのトップ対談だったが、結果は伊藤氏が自然を残しつつ開発を進める強い意向を示したという。
市は土地所有者の意向を尊重する考えで、伊藤邸敷地の買い上げを断念、貴重な自然が将来に亘って保全されることを条件に都市計画提案を協議していく意向。