何故、こんな人事になったのか。下出氏が建設部長に就任したのは2年前。後志総合振興局長からの出世だった。地域選出の議員あるいは議会関係者の強い働きかけがあったという。そして高井副知事を通して業者も含む人脈の繋がりができたのである。(敬称一部略)(高橋はるみ知事の4期目は高井前副知事の置き土産人事でスタートした。写真は、4月12日の知事選で4選を果たした高橋知事)
もうひとつ。それは建設部に連綿と続く道路系と河川系の対立である。数で言えば、道路6・5に対して河川3・5と言われるが、この数において劣勢と言われる河川系はここ10数年、部長を輩出していない。道路系の後塵を拝してきたのである。その彼らが小躍りしたのが、高井氏の副知事就任であった。もともと土木部河川系として任用された経歴がある高井氏は河川系の星となったのである。
2009年就任間もなく、河川系OB主催の祝賀会が開かれたが、この席に当時の建設部長以下、道路系は1人も呼ばれなかった。一般的には副知事という立場を思えばそのような席には出るべきではないと思うが、高井氏はそう思わなかったということだ。
高井氏に架せられた十字架は河川系部長の輩出である。今回、退任に際してこの件の行動が大きな問題になった。今回の人事で建設部出身者の振興局は空知1振興局となった。河川系の金田幸一氏である。通例、建設部出身者の振興局は2局。各々部長候補として競い合うというのが伝統だった。今回は1局に絞りもう1人の部長候補の岡田恭一技監(道路系)は東京事務所長に転出となった。東京事務所長は2代続けて建設部出身になる。これは異例と言えるだろう。
ある建設部OBは、「下出といい、岡田といい、今回の人事は笑ってしまう」と呆れている。ちなみにそれ以前の東京事務所長は農政部出身の技術屋が3代続くのだから「事務系は怒っているだろうな」(別のOB)という。
以下、道庁の内情に詳しいジャーナリストの見解。
「簡単な話で、これで道路系の次期部長候補はいなくなったということ。今回の名取哲哉建設部長の後に金田へと河川系が続くラインが敷かれたということだ。東京事務所からの建設部長はない。岡田は多分他の部長級へ回るだろう。今回の人事でも釧路総合振興局長だった土栄正人は57歳、日高振興局長の名取は58歳だった。しかし、名取は部長、土栄は監査委員会事務局長。確かにどちらも10級の部長職だが、土栄の場合、10級になったのだからこれで終わりですという人事だ」
そして下出氏について、「彼は道路系だが、今では高井氏の配下、建設部のお目付け係として置いていった。つまり、高井氏は建設部をコントロールすることができるようになったということ」と言う。
このことが最大の理由で他の人事がパズルの組み合わせになっていったということなのだ。怖いような話だが、ある幹部に言わせると、「6年目の高井さんにはちょっとモノが言えない雰囲気になりましたね。機嫌が悪いと電話にも出ないとか…。良い時に辞めてくれたと皆さん思っているんじゃないですか」と言う。
そういうことだから、今回の人事はひと言で言えば、在庫整理、在庫一掃セールみたいなもので人事の目的はそれだけでなかったのかとも思える。ちなみに在庫セールで最も多かったのは総務部系だ。それだけ人材が溜まっていたということだろうが、事務系の反発を抑える意図もあったのだろう。
知事は3期の延長の4期ではなく、新しい1期と言っていたが、この幹部人事を見る限り3期目の続きの4期、3期の後始末に過ぎなかったのではなかったか。多分、評価の対象にすらならない人事だと思う。
職員のモチベーションはこれで到底上がるとは思えない。夢を持てる人事ではない。何が評価の基準なのか。これでは戸惑う職員が多いだろう。道庁職員の就業率のうち10~15%が何らかの理由による欠勤状態にあるという。この傾向はここ数年、著しくなっているという。そのなかで目立つのは怠業で、病気その他の理由を付けて出勤せず、上司も黙認するケースが多いという。税金のムダだが、これもモチベーションの低下が根底にあるのだろうと思われる。少子化対策も良いが、その前にやることがあるのではないか。(終わり)