「北海道リート」運用開始、資産流動化で地場企業に活力

不動産マーケット情報

 北海道に特化した、私募不動産投資信託の「北海道リート投資法人」(本社・札幌市中央区)が、2024年2月から運用を開始している。同法人が、資産運用を委託している北海道アセットマネジメント(同)を通じて、札幌市内の商業施設や賃貸マンションなどを取得。北海道リート投資法人が、それらの不動産を証券化、道内外の機関投資家に販売し、配当利回り4%以上を目指す。(写真は、再開発が進む札幌市内)

「もう一足早く北海道リートが運用を開始していたら、IKEUCHI GATEの売却はなかったかもしれない」と嘆くのは、札幌市内の不動産関係者。IKEUCHI GATEは、札幌市の南1条通に一昨年オープンした商業ビル。地元の丸ヨ池内が建設し、世界的な建築家・伊東豊雄氏が設計を担当。鳴り物入りでオープンした。しかし、コロナ禍での門出で売り上げを確保できず、土地建物を本州企業へ売却、丸ヨ池内は運営のみを行なう体制になった。

 このように地元北海道の事業者が、自らの資産を手放さざるを得なくなるケースは、再開発事業でも多発している。4丁目プラザビルやPIVOTも、元々は地元の地権者が土地建物を所有していたが、再開発には、多額の資金が必要なことから、本州大手に土地建物を売却。現在、本州企業が主導して再開発を進めている。

 だが、不動産投資信託(REIT)の仕組みを利用すれば、道内企業が保有する資産を有効活用できる。本州企業に売却することなく、地場資本でまちづくり投資や新規事業などの投資に振り向けられる──こうした考えをもとに構築されたスキームが、北海道リート投資法人だ。

 リートは、投資家から集めた資金や金融機関からの借り入れでオフィス、賃貸マンション、ホテル、老健施設などの不動産を取得し、賃料や売却益を投資家に分配する仕組み。不動産を保有する投資法人、その投資法人と委託契約を結び、運用を担う資産運用会社で構成される。

 リートは、Jリートの上場不動産投資信託と非上場の私募リートがあり、Jートは、個人も証券を買えるが、私募リートでは、機関投資家に限定される。このため、資産ポートフォリオなどの開示も同様に限定され、運用資産の規模などを広く開示する必要はない。Jリートに比べて株式市場の変動による影響が少なく、長期的な投資や安定的な資産運用に適していると言われている。

 北海道リート投資法人の運用開始に先立ち、2022年7月に資産運用会社の北海道アセットマネジメント(札幌市中央区)が設立された。この会社には、アインホールディングスやニトリホールディングス、伊藤組土建、野口観光など道内19社と三菱UFJ銀行の計20社が出資、資本金は2億4500万円。一般的なリートは、特定の企業が50%以上を出資して、その特定企業が関係する物件の取得が中心だが、北海道アセットマネジメントは、各社の出資比率が最大でも8・2%で、特定企業に集中していない。「特定企業の利益追求を目指すリートではなく、地域一体で地域の価値向上を目指す協同型に特徴がある」(北海道アセットマネジメント・濱野恭義社長)。
 道外にも地域に特化したリートの資産運用会社はあるが、株主が一部の企業や金融機関に偏っている場合が多い。こうした点からも北海道リートのスキームは、国内初の協同型リートと言うことができる。

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