フランスアクサグループの日本法人アクサ生命保険(本社・東京都港区、札幌本社・札幌市中央区)は、北海道札幌で、数百億円規模のグリーン投資を行う。中島公園近くの旧ヤマハ跡地で建設するホテル・オフィス複合ビルがそれで、世界水準の環境性能と14日間の自立機能を備えたBCP(事業継続計画)対応が可能なグリーンビルとする。(写真は、2025年6月竣工予定の中島公園プロジェクト竣工イメージ図)
(写真は、2023年5月18日に行われたプロジェクトの記者会見。左から札幌市の秋元克広市長、北海道の鈴木直道知事、アクサ生命保険の安渕聖司社長、アクサ・リアル・エステート・インベストメント・マネジャーズの早藤嘉彦社長)

 中島公園周辺では、数年後に札幌パークホテルを解体してサンケイグループと札幌市が、MICE施設(企業などの会議、研修旅行、国際会議、展示会、見本市などが行えるホテル一体型施設)を整備する方針になっており、アクサ生命のプロジェクトはその先導役となる。竣工は2025年6月を予定している。

 アクサ生命保険は、東日本大震災の経験から、本社機能を東京以外にも設置することを決め、全国65都市の候補地の中から、2014年に札幌本社を設立、本社機能の複線化を行った。札幌三井JPビルディング(北2条西4丁目)の竣工に合わせて入居、現在は札幌本社に約600人(現地採用9割)が在籍している。その後の胆振東部地震の経験から、さらにBCPを強化。コロナ禍では、生保業界初のコールセンター100%リモート化を実現した。
 
 同社グループは、札幌市にホテル1棟、マンション2棟の不動産投資を行っているほか、旭川市にはグループ2社がコンタクトセンターを構えるなど、北海道はアクサの経営戦略上、重要な地域となっている。

 そうした中で同社は、1994年の設立以来の大規模投資となる「中島公園プロジェクト」に着手する。旧ヤマハ跡地など約2441坪(8055・91㎡)の敷地を2021年4月に、同社の特定目的会社ALJ Sapporo RE2が取得していた。その敷地に建設する建物は、免震構造の鉄骨造で地上14階、延べ床面積約1万5965坪(5万2776・88㎡)。1階~3階までが吹き抜けになっており、フードコートや会議室、ワーカー向けラウンジ、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどを誘致する。災害時には、周辺住民を含めて一時的に滞在できるスペースとする。
 
 4~8階が賃貸オフィスで、アクサ生命保険札幌本社が移転するほか、他企業のオフィス誘致も行う。9~14階には、インターコンチネンタルホテルズグループ(本部・イギリス、略称IHG)が展開する最上位ブランドの「インターコンチネンタルホテル&リゾーツ」が入る。同ホテルは、札幌で初の外資系ラグジュアリーホテルとなる。

 客室は、42㎡のスタンダードルームから159㎡のスイートルームまで合計149室。2つのレストラン、バーラウンジ、インドアプール、ジムなどを備え、北海道の自然と四季を感じさせるような邸宅風のデザインとする。IHGは、北海道でANAクラウンプラザホテル、ホリデイ・インなど4軒を運営しており、今度のホテルは5軒目で、「インターコンチネンタル」としては国内11軒目となる。

 グリーンビルとして、コージェネレーションシステムの導入や外装サッシに断熱性の高い素材を採用、コンセント容量の合理化なども行い、同規模の建物に比べてエネルギー消費量を3割減らす。グリーンビルの国際的な認証である「LEED Gold」やDBJ(日本政策投資銀行)グリーンビルディング認証も取得、世界基準の環境性能とする。

 また、BCP対応として、高圧電線をデュアルで導入するほか、ガスとオイルの非常用バッテリーを採用、ガスが止まってもオイルで動かす非常用電源にする。また雨水のリサイクル、排水の貯水槽も設け、インフラが寸断されても14日間自立稼働できるようにする。

 建物を建設するのは、アクサ生命保険の資産を運用する(運用額約5500億円)アクサ・リアル・エステート・インベストメント・マネジャーズ(本社・東京都港区)。米国ゲンスラー社の助言を受けて全面ガラス張りとしており、プロジェクトデザインはケネディクス(同・同都千代田区)、設計監修、工事監理監修は久米設計(同・同都江東区)、施工は竹中工務店(同・大阪市中央区)。駐車台数は214台(内機械式立体駐車場は144台分)。2023年3月末に着工しており、竣工は2025年6月、「インターコンチネンタル」は同年秋に開業する予定。なお、MICE施設完成を見込んで、空中歩廊で連結できるようにしておく。

 2023年5月18日に、札幌市中央区の札幌プリンスホテル国際館パミール6階「日高」で行われた記者会見で、アクサ生命保険の安渕聖司社長は、「このプロジェクトは札幌市の新たなランドマークになることを目指しており、グリーン投資を通じて地域経済に貢献したい」と話した。なお、プロジェクト隣接地の旧ミカド跡地では、積水ハウス(本社・大阪市北区)がホテル建設を進めており、外資系が入るもようだ。


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