マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の42回目は、中央区北2条西3丁目の「札幌第一ビル」と「若草ビル」。(写真は、解体工事が始まっている「札幌第一ビル」と「若草ビル」)
JR札幌駅南口から南に延びる札幌駅前通は、文字通り札幌のメインストリート。1972年の札幌冬季五輪の時期に建設されたビル群は、ここ10年間だけを見ても次々と建て替えられていった。駅前通のビル建て替えは一部の例外はあるものの、西側が先に進み、東側がそれに続く、“西高東低”ならぬ“西先東後”の様相を呈している。現在、解体が始まっている「札幌第一ビル」と「若草ビル」は、札幌駅と大通駅のほぼ中間に位置する横並びのビルで、こちらも東側に建っている。
「札幌第一ビル」は、地下2階、地上7階建て、1962年に竣工した。土地建物は、北海道共済農業協同組合連合会(札幌市中央区)の所有だったが、合併により全国共済農業協同組合連合会(東京都千代田区)の所有に代わり、2011年2月に桂和商事(本社・札幌市中央区)が取得、2022年4月に不動産の有効活用とエネルギー創出事業を展開しているいちご(本社・東京都千代田区)子会社のいちご地所(同・同)が買収した。
「若草ビル」は、パチンコ店を展開していた若草企業(札幌市中央区)が1967年に竣工した地下1階、地上5階建てのビル。本社事務所と「パチンコ若草」が入っていたが、パチンコ店は1997年に終了。その後は、「現代仏壇」のショールーム、タカハシ(本社・網走市)がカラオケ店舗「歌屋」になったが、2021年10月末に営業を終えた。タカハシの営業終了前の同年9月末に、いちごが建物を取得した上で敷地に90年間の賃借権を設定した。
両ビルは、今年春にフェンスが2階の高さまで建てられていたが、秋になってようやく解体工事が進み始めた。解体期間は10月3日から2023年2月28日まで、解体業者は本間解体工業(本社・札幌市西区)。両ビルは、いずれも札幌冬季五輪前に建設されたビルで、築60年近くが経過している。古き良き時代に建てられた両ビルの解体によって、駅前通の記憶が更新されていく。