マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の20回目は、中央区南3条西11丁目の「中央区役所」。(写真は、解体工事が始まった「中央区役所」)
降りしきる雪の中で解体作業が行われている。石山通に面した「中央区役所」。札幌冬季五輪が開催された1972年3月に建設された区役所と、旧日本住宅公団(現都市再生機構UR)の住宅が併設された地上13階建て。隣接する「札幌プリンスホテル」は、中央区役所より2ヵ月早い1972年1月21日にオープン。2つの建物は、冬季五輪を機に建設された石山通のメルクマールでもあった。
「札幌プリンスホテル」は、2004年4月に高さ107mの「札幌プリンスホテルタワー」として建て替えられたが、今度は「中央区役所」の番だ。建て替えは施設、設備の老朽化、耐震性能の不足によるもの。建て替えにあたり、市はPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ=民間の資金と経営能力、技術力を活用して公共施設等の設計、建設、改修、維持管理・運営を行う公共事業の手法)を導入、さっぽろシビックパートナーズ(札幌市中央区)と約127億円で契約を締結した。
さっぽろシビックパートナーズは、大成建設、伊藤組土建、日本管財、アスビックが構成企業で、日本設計、セコマが協力企業。さっぽろシビックパートナーズが建物の解体、新複合庁舎の建設を行い、建物を市に譲渡した後、維持管理、運営を行う。契約期間は20年間。
解体工事は、2022年1月11日から始まっており、2022年12月31日まで続く。新複合庁舎の着工は2023年1月、供用開始は2025年2月。複合庁舎は、地下2階、地上6階建て、札幌市時計台などで用いられている下見板をモチーフとした親しみやすいデザインで、道産木材や道産レンガなど地域資材を活用、市民に寄り添う“まちのコンシェルジェ”を目指している。