マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の14回目は、札幌市中央区南1条西5丁目の「ホテルオークラ札幌」。(写真は、解体が始まった「ホテルオークラ札幌」)

 人が集う建物に人の気配がなくなるのは、うら寂しいもの。まして、人が集まることを目的にしたホテルが、その役割を終えると、なお一層寂しさが募る。今年9月20日に閉館した地下2階、地上15階の「ホテルオークラ札幌」が、前身の「ホテルアルファ・サッポロ」時代を含め41年間の役割を終えた。灯が消えた建物は、自らの役割を自問しているようでいて誇らしげでもあり、悲しげでもある。

 市電が軽やかに走り、道行く人の声が充ち、札幌の賑わいを肌で感じることができる中心地に近い空間。その一角でホスピタリティを提供し続けてきた41年間、建物の内と外に街の歴史を溶け込ませてきた。そんな建物の表情を隠すように、白いフェンスが周りを囲み始めた。閉館から1ヵ月半、虚空に伸びた老館の最後が迫ってきた。

 建物解体の発注者は、不動産を所有する三菱地所(本店・東京都千代田)の北海道支店(札幌市中央区)、解体の元受けは鹿島建設(本社・東京都港区)の北海道支店(札幌市中央区)、工事は本間解体工業(本社・札幌市西区)やユカロン札幌(同・同市東区)も行う。解体工事は2022年4月30日まで続く。

 来春、更地になる土地には三菱地所がオフィスビルの建設を予定している。街の歴史を支え彩ってきた土地が、新たな街の歴史を生み出す受け皿になる。


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