札幌市の再開発事業に暗雲が漂っている。JR札幌駅北口の「北8西1」(約2ha)の再開発事業の事業主体となる「札幌駅北口8・1地区市街地再開発組合」が、地権者の合意形成なく設立され“暴走”しているからだ。24日には地権者の関係者が札幌市議会に事業見直しの陳情書を提出、再開発事業では珍しい足並みの乱れが生じている。(写真は、北8西1の再開発事業の予定地)

「北8西1」再開発は当初、50階建てマンション、12階建て医療・福祉棟、医療棟、立体駐車場の4棟の計画で2014年8月に市が都市計画決定した。それに伴い再開発準備組合に基本設計等の作成料として、15年3月に市や国の補助金1億3840万円が投入された。

 その後、北九条小学校の日影問題と建設コストの上昇によって当初計画から50階建てマンション、14階建てホテル、4階建て業務棟、立体駐車場の4棟に変更され、その変更案が16年6月に都市計画決定された。

 再開発事業を具体的に進めるには準備組合から正式な組合(以下、本組合)への移行が必要だが、「北8西1」は09年に準備組合が発足したものの、本組合設立は当初の14年から計画変更などによって地権者の合意形成が難航、10年経過した19年7月19日にようやく設立にこぎつけた。

 しかし、この本組合設立を巡って地権者の関係者は「準備組合の理事長は地権者の意向を十分に汲み取らず、コンサル会社と特定業務代行者であるゼネコンの意向を優先して組合設立を強行した」として計画段階からの見直しを求め、札幌市議会に陳情書を提出した。

 この関係者は、「市や国の補助金を含めて5年間で8億円近い累積不良債務が準備組合に生じている。それだけの債務があり本組合設立は不可能だったにもかかわらず本組合設立を強行した。さらにこの再開発は認可基準を満たしておらず都市再開発法17条に違反している」と述べ、「都市再開発法に定められた組合設立要件に違反しているのにもかかわらず許可を出した札幌市の対応は問題」として市の認可を取り消すことを陳情している。

 陳情書は受理され、全市議の元に届くという。関係者は、「本事業は国内の市街地再開発事業の歴史に例を見ない法に公然と違反して組合設立を認めたもの。このまま本事業を継続実行した場合、地権者及び市民の権利及び財産、公共の福祉が蔑ろにされる」と訴えている。



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