ーーそこまで顧客企業の中に入りこんで、採用アドバイザー的な仕事をしている求人媒体の営業は少ないと。
木下 そうですね。でもこれは残念ながら仕方のないことだとも思います。営業には、受注件数や受注金額などのノルマとか目標とか、そうしたものがあることも多いと聞くので。私は、やみくもに有料の求人広告が悪い、求人広告の営業が悪いなどと言うつもりは全くなくて、全ては活用の仕方です。それこそ、採用戦略や求人コンセプトからつくって、「ではこの求人広告をこういうふうに活用していこう」とか、「これって、Aという求人広告じゃなくて、Bの方が良いよね」と考えていくことが大切なのです。ある程度の規模の企業であれば、人事専任者や採用専任者がいるので、彼ら・彼女らがいろいろと調べて、社内稟議を経て、求人媒体の契約が実行されています。
すると、稟議の承認手続きの中で、「これで本当にいけるの?」、「もう少し小さく始められるプランにしては?」という問いかけが、担当部門や決裁者である社長や役員、部門責任者から出てきます。ところが、専任がいない中小企業では、こうした牽制やチェック機能が働きにくい。そうした場合に、求人媒体事情にも明るい採用顧問が、客観的な第三者視点での情報を提供することで、経営者の意思決定、最適解を導き出すお手伝いをしています。いってみれば、セカンドオピニオンのような機能も提供しています。当社が展開している採用顧問のサービスは、人事・採用の領域で経営者の右腕となることを心掛けています。
ーー採用改善の専門家というのが目指すべき方向ですか。
木下 まずは、「中小企業の採用支援といえば木下」と言ってもらえる状態を目指しつつ、ゆくゆくは人事・採用を基軸にした、中小、中堅企業に特化した経営顧問やCOO(最高執行責任者)代行のようなビジネスに昇華させていきたいと考えています。残念ながら、少子高齢化が止まることはおそらくないと思いますし、また、労働者人口が減り続けるのも、もはや避けられないと思います。そのような中で、今後、これまで以上に人事・採用は、経営の危機的要素になっていくものと捉えています。だからこそ、人事・採用を基軸にした、経営顧問やCOO代行といったビジネスに変化させていけたらと思います。
そして、多くの中小企業を見てきましたが、人手不足というのは、例えるなら、バケツに穴が空いていて、貯めた水が常に流れている状態です。人材の定着を図ろうとしても、その矢先から人が辞めていき、結局残った社員に負荷がかかり、また辞めていくという悪循環です。鶏が先か、卵が先かの話になってしまいますが、まず、中小企業がどこに手を打つべきなのかを考えた時、人材育成や人材定着と併せて、採用力強化ではないかと思います。求めている人を採用できるかどうかは、事業を成長させられるかどうかだけでなく、事業を継続できるかどうかといった、経営の危機的要素になっていくものと考えており、私は、人事顧問、採用顧問として、日本や世界を支えている企業、その地域になくてはならない事業を行っている企業を支援していきたいと考えています。
ーー今は東京中心ですが、札幌、北海道にも数年後には拠点を設けたり、顧客を開拓したりしますか。
木下 数年後と言わず、1、2年ぐらいで、北海道にも顧客を広げていきたいです。現状でも、北海道の取引先はありますが、今後は、採用改善セミナーを道内の商工会議所や金融機関、業界団体でも開催して、採用改善の考え方や方法をお伝えしていきます。まずはそういったところから、微力ながらも当社のビジネスを通じて、故郷・北海道に恩返しをしていきたいですし、北海道経済にも貢献していきたいです。
ーー北海道の役に立ちたいという気持ちが強いですね。
木下 私は北海道が大好きで、育んでくれた大地に、自分のビジネスで恩返しをしたいと常々考えてきました。ようやくそれができる時が来たと感じていますし、今後それを加速させていきます。今は東京を拠点にしているので、まずは、東京から札幌や北海道に関われることはないかと考え、昨年、札幌市東京事務所が事務局をされている「東京札幌会」という、ふるさと会・県人会に入会し、この春から幹事を務めています。北海道には、さまざまな可能性がある一方で課題も多い。その課題の一つが人材採用です。北海道と北海道経済をより活性化するため、微力ながらも力を注ぎたい。