(写真は、ISHIYA SHINSAIBASHI限定の「ゆきどけ」)
ーー『ゆきどけ』のお菓子としての特徴は。
石水 フィナンシェ生地で中にはキャラメルのソースが入っています。キャラメルソースは砂糖を炊いて作るので苦みが出ます。甘さの中にちょっと苦みが混じったベースになっています。当社らしさとしてはホワイトチョコレートを表面にコーティングしているところです。
ーー大人気でなかなか手に入りません。
石水 午前中で完売してしまいます。宮の沢工場(札幌市西区)で製造して運んでいますが製造能力に限界があって1日約300箱、売価ベースで45万円くらいが限界です。
ーー吉本興業の反応はいかがですか。
石水 非常にいいですね。吉本さんは数ヵ月前にヤミ営業問題がありましたが、『関係先にゆきどけをもってお詫びに行きます』と。吉本さんとお付き合いして感じたのは、すごく真面目な会社ということ。お笑いに真剣に向き合っていると感じました。『ゆきどけ』の記者発表の時も細かいことですが、私はクールビズで行ったのですが吉本の幹部の人たちはネクタイをしていました。私を見てネクタイを外されて会見に臨まれました。本当に真摯に対応してくださっていると思いました。
ーー吉本興業とは継続的にコラボ商品を作っていくのですか。
石水 商品もそうですし、イベントなどでもアライアンスを組むことも考えています。
ーー関西進出の手応えは。
石水 午前中で完売の状況が続いているので出だしは非常にいいです。味の評価も高い。『ゆきどけ』にフォーカスされがちですが、売り上げのメインは『サク・ラング・ド・シャ』です。それもきちんと評価されているのがうれしいですね。
ーー関西展開の今後については。
石水 新商品、新サービスの展開や新しい販路も含めて考えています。『ゆきどけ』については製造キャパの問題があるので当面、これ以上製造して拡販するのは難しいですね。
ーー話を戻しますが、吉本興業とは『ゆきどけ』から新たなステージに入ったということですね。それにしても札幌の企業が大阪の企業と組んで事業展開するのは珍しいと思います。
石水 北海道の企業は北海道から外に出たがらない傾向があると思います。ポテンシャルはものすごくあって北海道物産展などではどの県の物産展よりも人気がありますし、世界、特にアジアの人たちは北海道が大好きです。外に出ないともったいないと思います。
ーー出るにしても戦略が定まらないと足を引っ張ることがあります。石屋さんが関西や関東に出て成功している理由を皆さん知りたいのではないでしょうか。
石水 秘訣と言えるかわかりませんが、まず一歩踏み出すことではないでしょうか。しかも他がやっていないやり方で。出ることのリスクと出ないことのリスクがあると思います。出ることのリスクは失敗するということ。出ないことのリスクは本来出たことで得られる売り上げや利益を放棄することだと思います。私は2つのリスクを考えた時、出ない時のリスクの方が大きいと考えました。
東京・銀座に出店した時もそうですし吉本さんとのコラボもそうです。吉本さんの場合は今年7月に吉本さんの不祥事があったので、コラボしない選択肢もありました。でもリスクを取らないリスクのほうが、本来得られる利益とか話題性を逃すという意味で大きいと判断したので『やる』と決めました。
ただ、今回の吉本さんとのコラボについても信用できる人たちに相談しました。ほぼ100%の人が『絶対やったほうがいい』と答えてくれました。私自身も不安なのですが社内外の人に相談して決断することが大切だと思います。