ISHIYAブランドとして9月20日に「ISHIYA SHINSAIBASHI(イシヤ心斎橋)」(大阪市中央区、大丸心斎橋店地下1階)を出店、関西エリアに進出した石屋製菓(本社・札幌市西区)。2017年4月の関東進出から2年で関西進出を決めたのが、石水創社長(37)その人だ。関西進出にあたってはかつての裁判相手であった吉本興業(本社・大阪市中央区)と手を組むなど骨太な一面を見せる。石水社長に吉本興業と組んだ理由や道外展開の道筋などについてインタビューした。(写真は、インタビューに応じる石水創社長)
ーーISHIYAとYOSHIMOTOのコラボ商品『ゆきどけ』の開発経緯を聞かせてください。
石水 発端は吉本興業のお菓子『面白い恋人』です。吉本さんは最初、関西圏だけでそのお菓子を売っていたのですが、東京や新千歳空港のお土産屋でも販売するようになりました。そうなると当社の『白い恋人』と紛らわしくなってしまう。そこで当社から訴訟を提起しました。2011年のことで私はその時は副社長でした。
裁判は1年半かかりましたが、和解をして関西圏だけで『面白い恋人』を販売しても良いということになりました。和解した直後、吉本興業の役員の方が当社に来られて、謝罪された後に『コラボ商品を開発しませんか』と提案されました。和解した直後でしたから断りました。
それからしばらくはお互いに接触はありませんでしたが、昨年、大丸心斎橋店がリニューアルすることになって大丸から『ISHIYAブランド』での出店を打診されて、出店を決めました。しかし、大阪で『白い恋人』の知名度はあっても『ISHIYA』ブランドは知名度がありません。どうしようかと考えていた時に、大阪には吉本さんがいるじゃないかと思い立ったわけです。
奇しくも吉本クリエイティブエージェンシーのエグゼクティブプロデューサーに、元東武百貨店の内田勝規さんというカリスマバイヤーが就いておられました。この方とは20年以上のお付き合いがあって北海道物産展などですごくお世話になっていました。
内田さんに相談すると『ぜひ』と前向きでした。内田さんも心のどこかで吉本興業と石屋製菓にわだかまりがあることがずっと引っ掛かっていたということでした。今回のコラボの話はすごくうれしいと。それが昨年末のことでした。
ーーかつての仇敵と手を結ぶというのは大阪商人顔負けですね。
石水 『白い恋人』と『面白い恋人』との争いは当時全国的なニュースになりました。和解した後も道外の人と面談すると、必ずと言って良いほどその話になりました。お客さまの脳裏に焼き付いていると感じました。逆手に取ると面白いかも知れないと当社の開発や販売部門などから湧き起こってきたのです。実は私は考えてもいなかったので、『それは面白い』と即、決断しました。打ち合せの中で、どんどんアイデアが湧き、『わかい』や『なかなおり』などの商品名も出ましたが、『ゆきどけ』が出てくると一同は膝を打ちました。
ーーお菓子の開発にあたって吉本側の関わりはありましたか。
石水 最初、吉本さんから芸人をパッケージに使い、みたらし味など大阪らしさを打ち出したいという提案があって、当社もそういうコンセプトで進めていました。ただ、実際に進めていく過程で、新製品を出すのなら本当に美味しいものを出したいという方向に双方が方針転換していきました。最終的に、北海道らしさや大阪らしさのコラボではなく、大阪の手土産としてふさわしいものを作ろうということに立ち返りました。そのことが良かったと思います。
開発コンセプトは、『オイシイおいしさ』です。おいしいにはお笑いのオイシイも入っています。コピーにはLaugh&とSweetsを使いました。これもたまたまなのですが、吉本さんは『Laugh&Peace』、笑いで幸せをキャッチフレーズにしています。当社のキャッチフレーズは『Love&Sweets』、お菓子で幸せをです。偶然ですがとても語呂が似ている。共通の接点が見つかってこれは面白いね、と盛り上がりました。