――eコマースとネット広告の自前化は、ひとつのビジネスモデルと言えそうですね。
木下 そうなってきている感じがします。付け加えるとすれば分析力の強化ですね。分析というのは、例えばネット広告を出すことによってCPO(コスト・パー・オーダー=注文1件あたりに必要となる費用)がいくらになるのか、リピート率がどのくらいで利益はどの程度になるかを分析する力です。そこを当社のように1円単位まできっちりと見ることができるネット企業は少ないと思います。
――それは他社との差別化でかなりの強みですね。
木下 ネット広告のスキルとマーケティング力、クリエイティブ力、分析力をバランスよくできている企業はそんなにありません。当社のモデルは世界レベルで通用する可能性があると自負しています。
――言わば、北の達人コーポレーションのコアテクノロジーという訳ですね。
木下 当社が構築しているeコマースのコアテクノロジーに沿った商品を我々が作っていくということになります。私たちに何でも売る能力がある訳ではなくて、売れる商品はどういうものかを探すところから商品開発が始まります。当社のeコマースに、他社製品を流して欲しいという引き合いがとても多いのですが、向き不向きがあるのでやはり難しいですね。
――商品は自社で企画して、製造は国内外の化粧品製造企業や健康食品製造企業に委託する体制ですね。
木下 国内では北海道から九州まで全国にある製造企業に委託しています。品質に対して当社は厳しい基準を設けています。委託先の製造現場にいた専門家が当社に数人転職してきていますが、彼らがチームを作って取引先やこれから取引をしようとする相手先の工場に出向き、当社の基準に適合するかどうかの監査を絶えず行っています。
――商品の品質や安全性で妥協しない“ものづくり企業”の一面もありますね。
木下 良い商品を作ることについて当社は妥協しません。ある容器の委託先を視察した際、容器の縁をカットしたらどうしても切り口が斜めになってしまうことがありました。相手先は『仕方がない』と主張しましたが、私は納得できずカッターの切り方を工夫することでまっすぐに切ることができるように改善しました。無理を要求したのではなく、最善を尽くしてできることをやろうとしただけです。
――木下社長はそういうことについて妥協を許さないということですね。
木下 絶対に妥協はしませんね。普通の人が諦める3歩先までは実際にトライしてみます。それでも無理なら諦めます。でもほとんどの場合、3歩先に進む前に解決しますよ。
――それが北の達人コーポレーションの社風として育まれているところかもしれませんね。
木下 そうかもしれないですね。私も『これくらいで良い』と思うことがありますが、『これくらい』の尺度がどうやら人とは違うようです(笑)。
――本日はありがとうございました。