旭川市内の経営者らで組織する日下・大武カムイミンタル塾実行委員会が主催、一般社団法人旭川しんきん地域振興基金が共催して「2016第10回日下・大武カムイミンタル塾」が20日、旭川市の旭川グランドホテルで開催された。特別ゲストとして講演したのは石水創(はじめ)・石屋製菓社長(34)。約130人が出席して石屋製菓のこれからの方向性についての講演に聞き入った。(写真は、講演する石水創・石屋製菓社長)
カムイミンタル塾は、旭川と縁のある日下公人氏(評論家・日本財団特別顧問)と大武健一郎氏(元国税庁長官・ベトナム簿記普及推進協議会理事長)を毎年夏に旭川に迎えて開催している経営セミナーで、今年は10回目。カムイミンタルとは、アイヌ語で神々の遊ぶ庭という意味。塾のネーミングはソニーの創業者の1人である盛田昭夫氏。
この日の特別ゲストとして『若手経営者が語る北海道スイーツの魅力』と題して講演したのが石水社長。約1時間に亘って、同社の歴史や『白い恋人』の誕生秘話、2007年8月に発覚した賞味期限改ざん事件、空港免税店で販売するきっかけ、広告展開などについて話した。
石水社長は、最近の業績について、「私が社長に就任した2013年は年商100億円に届いていなかったが106億円、132億円と毎年順調に伸びて前期は166億円だった。間違いなくインバウンドの爆買い効果がある。それが今年に入って少し落ち着いてきた。なくなったわけではないが、以前のように段ボールで100万円分買っていくようなことはない。本来の土産需要に戻ってきたわけで、ある意味で今期の数字がベースになってくると考えている」と述べた。
また、現在建設中の北広島工場について、「6800坪の敷地に工場を建設しており、『白い恋人』と『美冬』、チョコレートのラインを札幌西区の白い恋人パークから移設して来年夏から操業を始める。メーンの工場が北広島に移るので、白い恋人パークの魅力を充実させる。同パークは、アジア圏の観光客から地元客まで多く訪れており、現在は年間約70万人が来場、20億円の収入がある。それを2020年に年間100万人、年商30億円にする。それに向けたハード、ソフトの両面で大幅に改革する」と話した。
最後に強調したのが新商品開発。石水社長は「私の代で何としてもやりたい」と宣言したうえで、「当社は白い恋人が年間売上げの8割を占める。それは父が残してくれたものだ。インバウンド需要も含めてそうだが、私の力というのは殆どない。もちろん方向性は示すが、社員であり先代の島田(俊平)社長であり、会長の父(勲氏)が『白い恋人』をベースに築きあげてきたものだ。そういうことに支えられてやってきた部分が多い。取引先も特約店もそう。私の力は殆どないと思っている。もちろんそれを守ることも重要だと思うが、今、会社の業績が良くて『白い恋人』が売れているうちに新しい商品を新しい市場に向けてぜひトライしたい。その準備を今進めているところで、年内には発表できると思う」と語った。
1947年、澱粉の加工場からスタートした同社は、賞味期限改ざん事件で登板した北洋銀行出身の島田社長を除けば創業者の祖父から数えて創社長は3代目になる。学問や技芸を自分の子どもだけに伝える「一子相伝」の菓子づくりを背負いつつ、創社長の新たな時代が始まろうとしている。