釧路生まれで札幌育ちの歌手・合田道人(48)さんがデビュー30周年記念コンサートを9日、道新ホールで開いた。合田さんは、北海道新聞に連載している童謡に隠された意味や誕生のエピソードを綴った「あの日の歌景色」で知られるが、本業は歌手。この日は、札幌光星高時代に作詞作曲したデビュー曲「釧路にて」という抒情的フォークも披露するなど、初めて開く故郷での公演に熱の入ったステージが2時間半に亘って続いた。
道新ホールは満杯で急遽パイプ椅子で臨時席を設けるほど盛況。観客は60歳代以上の女性が中心だったが、合田さんの高校、大学(札幌大ロシア語学科)時代の友人たちも駆けつけた。
合田さんは、高校時代からSTVラジオに出演するなど「松山千春に続く合田道人」(ご本人のステージでのトーク)として期待の新人だった。大学入学と同時にナベプロに入り東京での活動が中心になったため大学には殆どいけない日々が続いた。
大学卒業後に本格的に上京、歌手がやがて番組や舞台の構成・演出にウェートが高まり、司会業にも。独立してプロダクション経営に乗り出し、ご本人も言うように「歌を忘れたかなりや」に。
合田さんがブレークしたのは8年前に出版した『童謡の謎』。これが評判を呼んでいつしか童謡博士の称号が与えられるようになった。その後、道新にも連載が始まって、童謡の合田道人として広く知られるようになったという訳。
童謡にのめりこむキッカケになったのは、愛娘が7歳のときに発した小さな疑問だったという。知っているようで知らない童謡の意味に関心を持つようになって、調べていくうちにどんどんと童謡の奥深さに魅せられるようになっていった。
コンサートの構成や演出を手掛けているだけに、この日の自身の舞台でも、「七つの子」や「しゃぼん玉」「雪」などの童謡に秘められた意味などを観客の心を掴みながら解説、その話しぶりやパフォーマンスに会場は沸いた。
八戸出身のソプラノ歌手阿部さとこさんが三味線の伴奏で津軽じょんがら節を歌ったり、合田さんがコンサートの構成・演出をしている倍賞千恵子さんと倍賞さんの夫でピアニスト、作曲家・編曲家の小六禮次郎さんとの共演など、ほのぼのとした中に懐かしさがこみ上げてくるような印象的なステージになった。
最後の曲は「故郷(ふるさと)」。《志を果たして いつの日にか 帰らん》というフレーズに入ると合田さんも感極まったのか涙声に。倍賞さんに肩を抱かれ、涙を振り切るように最後まで歌いきった。
合田さんは、札幌在住の元道新記者でノンフィクション作家、合田一道さんの長男。この日は、一道さん夫妻も鑑賞していたが終演後、一道さんの目も潤んでいるように見えた。
(写真は合田道人さんのコンサートパンフレット)