バーチャルとリアルの流通チャネルを一体化していく“オムニチャネル”でイオンとセブン&アイ・ホールディングス(HD)の2大資本が全国を席巻していく勢いだが、地域に密着した地場流通資本が生き残っていくことはできるのか――2014年は日本の流通業界が「2大資本VS.ローカル資本」の戦いを全国各地で繰り広げて行くことになるだろう。アークスの横山清社長は、全国3ブロックで地域の地場スーパーが立ち上がりアークス的経営体を創出すべきだと説く。横山社長に聞く新春特別インタビューの2回目をお届けしよう。(写真は、アークス横山清社長)
『イオン、セブン&アイHDの2大グループとの競争と言えば競争だが、“共創”ということだってある。彼らとは、現場では確かに競争だが業態、経営主体から言えば資本主義社会の典型である巨大資本がオムニチャンネル(バーチャルとリアルを連携させたマーケティング)も含めて支配していくということになるでしょう。バーチャルの世界ではやはり楽天とかアマゾンが出てくるが、オムニチャンネルの世界になると彼らも影響が出てくるだろう。楽天やアマゾンは、どんなやり方をしてもリアルな店舗が持っている役割は果たせない訳だから』
『大手2~3社で流通小売界を支配していく一方で、生協が全国一体と考えれば3兆円くらいある。その他大勢が私たちだが、アークスは単純な合従連衡ではなく、極端なことを言ったら社会民主的な政党と自民党的な政党を足して2で割ったような組織体。それが八ヶ岳連邦経営でありセンチペイド経営だ。足が百本あっても方向が同じなら強い組織になる。アークスは、設立後12年目に入っているが、増収増益を重ねている』
『ラルズが公取問題で課徴金を払って、損金計上できないからモロに影響して(アークスは)増収、減益になるかもしれない。それでも150億円の税前利益を出せればまだ優等生だ』
『おそらく我々のアークスのような経営形態が出てくるだろうが、東日本で1兆円、西日本アークスで1兆円、首都圏を中心とした中央アークスで1兆円と大体3兆円の食品のスーパーマーケットチェーンが可能になる。しかも地域密着型で地域シェアを限りなく30%に近づけていくと、仮に強い資本が来ても周辺を取り巻いて気が付いてみたらガリバー旅行記みたいに大企業の大掛かりなものが捕捉されることになる。こうなるためには、時間との戦いです』
『西日本アークスの核になるのは、大きい企業だからではなくて強いリーダーシップを持っているところだろう。母体になる企業は小さくても未来投資型の収益性があるところ、これしかない』
『東日本、西日本、中央と全国3ブロックのアークスを実現するには、やはり共同仕入れ機構のCGCグループが核になるのではないだろうか。加盟社の売上高を合算すると4兆円規模になる。私はCGCジャパンの副会長として最初から難しいことはわかっているし、不可能に近いけれども4兆円を超して“目指せ5兆円”というキャッチフレーズ作ったが、実際はなかなかうまくいかない』
『少し大きくなるとCGCを出て行ってイオン傘下に入るところもあった。しかし、アークスはCGCの理念と合致している。私たちは、志を持っている人たちと一緒にエリアの連結性と思想の統一性、そしてM&A、つまりマイント&アグリーメントで心身ともに一体化しているが自主性を尊重する形で進んで行きたい』
『そうは言っても簡単ではない。良いトコ取りで自主性を尊重すると言ったら必ず内輪揉めでおかしくなる。私たちはなんだかんだと言っても12年間増収増益でずっときた実績がある。しかも東証一部上場を維持している。(ラルズの)横山家のためにとか、(ユニバースの)三浦家のためにとか、(フクハラの)福原家のために働きますというようなしがらみは薄れてきている。しかし、地域の店舗運営においては地域密着型の特性は生きていて、アークスというより十勝、釧路では福原と言った方が分かりやすい。大手の傘下に入ってこれで安心だと言っても、跡形もなくなっているケースは多いわけです』
(以下は次回に掲載)