「イトーヨーカドー」と「西友」の北海道撤退や新参スーパー「ロピア」の出店など、北海道のスーパー業界が、大きく変わろうとしている。2024年に生じた変化は、2025年に幾重もの波となって、業界を揺らすことになるだろう。
リアルエコノミーは、新年恒例のアークス・横山清氏のインタビューをきょうから3日間、お届けする。社長から会長になって、初のインタビューとなったが、スーパー歴65年になろうとする横山氏の暗黙知が零れ落ちるような話が、ふんだんにあった。1回目は、同社が、2024年5月から始動した3C体制(横山清CEO=最高経営責任者、猫宮一久COO=最高執行責任者、古川公一CFO=最高財務責任者)の成果などについて聞いた。(写真は、インタビューに応えるアークス・横山清会長)
◆3C体制について。
私は、社長を約40年務めてきたが、専務時代の15年を含めると、代表権を持って55年くらい経営してきた。その間に、スーパーマーケットの環境や消費者の生活環境は、ものすごく変わった。そうした中で、私自身がマンネリになっているかもしれないということが、3C体制にした理由の一つだ。それと、なんだかんだといっても、2025年で満90歳になるからね。
当社らしいところは、役員間で何でも平気で言い合うところ。一昨年、「これからのスーパーがどうなるかというよりも、当社は、社長がいつどうなるかわからない」という声が出た。それじゃということで、徹底的に詰めた結果、確かにその通りだということになって、どうあるべきかを議論して3C体制にすることにした。
社長は、若ければ良いというものではない。これまでの役員体制で行っても、専務や常務がいたわけだから、ワンマン経営で押し通すこともやろうとすればできた。財務的にも、「こんなはずではなかった」という状況ではないからね。ただ、私の個性でやっている部分がかなりある。これも、そんなに間違ってはいないと思う。体制を変えれば良いというものではないけれど、現状で将来を見極めて行った場合、CFOも必要になってくるので、これまでの時速30kmを60kmしようと、3C体制にした。
◆会長就任後の変化は。
考えた通りにはいかないということを悟った。会長になったら、少しは楽になるかと思っていたら、逆でね。お金の入る仕事は減って、お金を出す社会福祉などの仕事が増え、時間も、出るお金も増えた。人生もそんなに長くないので、お世話になったところ、あるいは、こうでなければいけないというところに顔を出す機会が増えた。いずれにしても、思った通りにいかないということだけは、よく分かった。
◆猫宮社長について。
頑張りすぎて、心配している。自分もそうだったが、ラルズのような会社でトップをやる時は、端から端まで見たり、自らやったりしないと気がすまない。しかし、アークスのように、グループを全部まとめてということになると、非常に難しい。ラルズ時代と同じやり方で、こまめに端から端まで何でも知ろうとするエネルギーと努力が、逆に身体を壊したり、考え方が知らないうちに偏ってしまう危険性がある。
現場もひそかに見るくらいが良い。社長として、軍団を組んで、関係者を連れてぞろぞろと店に行くと、店の従業員たちは、「来るぞ、さあ」と緊張して待ち構えてしまう。私の主義は、ひとりで行って、表から入らず裏から入る。そうすると、管理状況などは大体分かる。このように手薄なところは、自分が確認するみたいなことが、時には必要だ。
でも、これを今のアークスのトップとしてやり始めたらきりがない。入社してからの習慣が身に付いてしまっているから、見なければ気が済まないだろう。しかし、それを耐えられるようにすることも必要だ。「こんなに一生懸命にやっていて、何でそんなことを言うのか」となるが、これも実際にやってみないと分からない。ここなんだ、経営者と幹部でも、決裁権がないものとの差が出てくるのは。
◆事業会社と持ち株会社のトップの在り方
事業会社と持ち株会社では、あるべき姿、概念を変えていかないといけない。私の勝手な考え方かも知れないが、その辺がちょっと違うところだと思う。適切かどうかは分からないが、あるスーパーは、地方の店舗を売り払って、その分だけ利益を出している。しかし、その利益は、本当の意味での利益なのか。地方でマーケットも少ないけれど、儲からなくてもやるということと、まだ可能性があるが、儲けが少ないから、この際だから売ってしまって撤退することとは、かなりの違いがある。
売って撤退することは、現実の問題として、自分たちの今持っている能力を、お金にすり替えただけということになる。財政的には、一時的には、お金になるかもしれないけれど、それが大きな負の原因になるかもしれない。そうかといって、儲からないのに、借金してガンガン伸ばすということもいけない。いずれにしても、組織としての生き方の問題に関わってくる。そうはいっても、最後は、残ったものの勝ちだ。やろうとしても、立場と時代によって、できる場合とできない場合がある。そうしたことも認識した上での、持ち株会社の経営ということになる。(次回に続く)