ーー2025年2月期の上期決算は、過去最高の売り上げでした。
青栁 売り上げよりも、利益が大切です。売り上げは、新店ができたり、店舗を活性化すれば、ある程度は伸びるため、上期も計画通りの増収になったが、減益には、大きな反省点が残ります。
ーー減益の要因は、何ですか。
青栁 人件費を含めた販管費増は、元々想定されていたことで、それらを吸収できるだけの営業総利益(粗利益)が稼げなかった。スーパー業界では、売り上げは確実に取れるものの、食品値上げで利幅が、以前ほど取れなくなっています。競争環境の中、売価に転嫁できない商品もあるからです。前期よりも粗利率が下がっているのは、どのスーパーも同じではないでしょうか。
当社は、GMS(総合スーパー)の衣料品、住居余暇品の改革に取り組んできました。2023年は、「イオン紋別店」を地方店舗活性化のモデルにして、「イオン北見店」などもリニューアルしてきました。さらに修正したのが、2024年リニューアルした「イオン余市店」や「イオン静内店」「イオン札幌苗穂店」です。
GMSの一般的な収益構造は、食品が5割で、衣料品が3割、住居余暇品が2割です。私たちは、2020年のマックスバリュ北海道との統合によって、食品の売り上げが全体の8割になりました。食品は、衣料品、住居余暇品と比べると粗利率が低いので、食品中心になってくると、利益率が低くなります。そのこともあって衣料品、住居余暇品の改革を昨年から実行してきました。
コロナによって、衣料品の売り上げは縮小したまま戻っていません。直近10年のトレンドを見ても、衣料品の売り上げは下がっています。衣料品、住居余暇品を下げ止まりにして、復活させていかないと、GMSフルラインのワンストップサービスが、どんどん重荷になる可能性があります。
西友の承継店舗の中で、食品、衣料品、住居余暇品が直営で残っていたのは、「手稲店」だけでした。他の店舗では、衣料品と住居余暇品はテナントで対応していました。「西町店」の承継では、テナントの「しまむら」さんと、補完関係になるとして、当社の紳士部門を直営で入れました。館全体を直営化しなくても、お客さまの利便性は、それほど変わりません。
ーー直営とテナントのミックスで、GMSを展開しようということですか。
青栁 今回の西友承継では、西友店舗のテナントを引き継ぎました。「しまむら」さんや「サンキ」さんとのパターンもあれば、「厚別店」は、「ドン・キホーテ」さんとの組み合わせになりました。全国のイオンの店舗を見ても、「ドン・キホーテ」さんとの組み合わせは、あまりないですよね。今までは、モール型店舗にしても箱型店舗にしても、イオンが中心に集客をして、専門店が入るという発想でした。今回の西友の店舗は、直営とテナントで、地域のニーズに応えています。これも、館の在り方の一つだと思います。
これまで、当社のGMSでは、そこまで踏み込めませんでした。「なぜ、直営の衣料品をやめてテナントを入れるのか」という抵抗感が、社内にあるからです。しかし現状、GMSでは、衣料品、住居余暇品は、目指すべき収益に届いていません。改善は進んでいますが、まだまだというのが、正直なところです。GMSの収益性を改善しないと、GMSの先行きは厳しいと考えます。
一方で、GMSは、地方に行けば行くほど、なくてはならないインフラになっています。商圏人口の問題もあって、衣料品や住居余暇品のテナントが出店できない場合もありますから、地方では、自前で衣料品、住居余暇品を展開しなければなりません。地方での必要な品揃えは何か、EC(電子商取引)でカバーできるものは何かなど、補完関係を考えて、地方に必要なGMSの在り方を考えていかなければなりません。
「イオン余市店」では、直営部分に書籍売り場を設けました。元々、北海道ニチイ時代に書籍を直営でやっていたので、ノウハウがあったからです。余市店の場合、書籍は、その地域に必要なものと判断して設けましたが、それほど多くの収益は望めません。売り場単体での収益性で判断するのではなく、館全体の機能から見て重要なパーツであれば、今後も設けていきます。