コープさっぽろ大見英明理事長インタビュー「ロピアとの戦い方」「アイアイテー買収の狙い」「後継者問題」

流通


 ーー2024年問題については。

 大見 YouTubeで経済産業省担当者とコープさっぽろグループが取り組んでいる物流改革について対談したが、物流問題では全然困っていない。750台のトラック・トレーラーの運行管理まで全部やってるから、3・6協定違反もない。当グループは、2年前に釧路の運送会社など2社をM&Aした。札幌から根室まで約430㎞ほどあるが、帯広近辺でドライバーが交代すれば、根室まで一度に運べる。当グループには、2024年問題がそもそも存在しない。

 ーー小売事業をしている事業者が、物流まで手掛けているところは少ない。

 大見 国内では、沖縄県のサンエーという年商2300億円くらいのスーパーが自前物流をしている。岐阜県のバローも自前物流と聞いている。バローの取り組みを参考にさせてもらった。

 ーー物流に関して次に手掛けるのは。

 大見 北海道ロジサービスの倉庫自動化を強化する。今年から来年にかけ、50数億円を投じてシャトルラックの最先端自動倉庫をつくる。店舗のグロサリーピッキング専用のロボットだ。これまでの、人の手による仕分けに比べて自動化によって効率化が進み、人件費削減も可能になる。倉庫の坪効率も高まり、空いたスペースで新たな取り組みもできる。

 ーーM&Aにも積極的だ。子会社や関連会社が増えている。

 大見 子会社を含めて関連会社は30数社ある。この6~7年で15、6社増えた。ほとんど赤字の法人はない。ほぼ黒字なので、グループの資産が増えている。コープさっぽろグループの出資比率は多くても49%以下、外部資本を51%にして、連結決算の対象外にしている。49%の出資なら、組合員向け事業も49%で構わないようだ。

 ーー今後も支援先、救済先は増えるのか。

 大見 中小規模の食品メーカーの支援が増えている。3年前に子会社化したアイスのさくら食品(小樽市)や昨年子会社にしたアスパラガスのクレードル興農(札幌市中央区)などがある。さらに3社くらいが検討に入っている。金融機関に累損を消してもらってから、譲渡を受けるパターンが多い。地域の食品メーカーを救済して存続できれば、地域の雇用は安定する。地域から会社がなくなると、雇用もなくなり地域にお金が回っていかない。コープさっぽろは、北海道から出られない。北海道が良くならないと存在価値がない。中小食品メーカーで後継者がいないなど、事業存続が難しい企業は、極力フォローしたい。

 ーーディスカウントの「ロピア」が11月に進出してくる。今後の道内スーパー業界はどうなる。

 大見 道内スーパーは3極構造だ。アークス、コープさっぽろ、イオン北海道の3グループで道内市場の80%近いシェアがある。今から新規参入して、1割、2割のシェアを取れるかというと難しいだろう。ディスカウント系スーパーは、これまで輸入品を安く仕入れられた。円安傾向の中で、輸入品価格も国産と遜色ない価格になっている。そうした中で、北海道の食品産業の振興と北海道の活性化をどう図っていくのか、それを追求しないと北海道の未来はない。
 スーパー各社は、北海道で付加価値を上げるお手伝いをすることに尽きる。コープさっぽろグループは、日本生協連合会を通じて、全国の生協に販路を持っている。また、ニチリウグループに加盟していることから、ニチリウグループ内の販路も構築できる。道内食産業の発展に貢献できる基盤がある。

 ーー地方の地場スーパーや農協系Aコープは、人口減少と物流問題で厳しい環境になっている。

 大見 (救済の)オファーがあれば対応する。コープさっぽろのグループに入ると、例えば従業員をコープさっぽろの職員として雇用して出向扱いにできる。人事、経理のシステムを一元化すれば、こうしたコストも下がる。営業部門も少ない人数で対応でき、役職員の兼務によって本社コストは3分の1くらいに減らせる。
 遠別町では、コープさっぽろグループの中央スーパーの店舗老朽化問題とAコープ閉店のタイミングが重なったため、コープさっぽろがAコープ店舗を借りて運営する方式に切り替えた。数年前に実施した夕張市内のコープ店舗とAコープ店舗の入れ替え存続と同じ方式だ。夕張の経験が遠別町でも生きた。地方ではそういうケーススタディーを生かしながら、コストをあまりかけずに店舗存続に向けた試行錯誤をする。

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