コープさっぽろ大見英明理事長インタビュー「ロピアとの戦い方」「アイアイテー買収の狙い」「後継者問題」

流通


 ーー店舗事業がプラス構造になってくると、宅配事業を含めてさらに成長が見込める。

 大見 宅配事業は、現在でも70億円の黒字が安定的に出ている。全国の生協では、宅配事業がマイナス成長になってるが、ずっとプラス成長が続いている。6月第1週から、グループの北海道ロジサービスの冷凍倉庫が動きだした。これによって、冷凍食品の売り上げが、週販売で3000万円くらい上がっている。年間52週で15億円程度増える計算だ。

 ーー宅配に関しては、ラストワンマイルをカバーする戦略から、拠点整備を進めている。

 大見 宅配事業は、利尻島、礼文島の一軒家まで、グロサリー商品を中心とした加工食品と日用品で2万品目ぐらいの注文に対応できる。大型スーパーや大型ドラッグストアの9割の品揃えができている。今回の、冷凍倉庫の稼働によって、冷凍食品を1000品目ぐらい加えることができる。蓄冷材のレベルも上がっており、置き配でも5時間以上は冷凍状態を保てる。どんな一軒家でも、冷凍食品を含めて運べるようになる。冷凍食品の品揃えによって、大型店舗より扱う商品数が多くなる。北海道の地方における食の問題は、宅配の冷凍食品強化で、ほぼ解決できる。

 ーー宅配事業の課題は。

 大見 昨年10月、宅配のアプリを利用している組合員の中で、カタログ配送不要を希望した人に(カタログを)送るのをやめた。トドック利用者47万人中、10万人がいらないと。その分、カタログのコストが下がる。ただ、カタログがいかなくなると、一度発注を忘れると、次も忘れる傾向にあることが分かった。つまり、購入商品の離脱率が高まる。アプリ化によって生じるその問題をどう防ぐかということで、定期登録の仕組みを充実させ、必要品目は毎週届くようにした。カタログが必要ないという利用者は、さらに2万人くらい増えており、12万人くらいはカタログ停止になった。アプリによる利便性をさらに良くして、使い勝手を改良していく。

 ーーアマゾンとの競合は、意識していないと。

 大見 意識していない。アマゾンプライム会員価格よりも宅配価格は安い。カタログ発行段階で価格点検をしており、直近のアマゾンで一番安いプライム価格と同等以下にするように設定している。宅配を利用している限り、アマゾンよりは安い状況をつくっていく。

 ーー宅配事業への設備投資は。

 大見 宅配センターの全道標準化まで、あと3~4センターを残すだけだ。また、既存の7~8センターの建て替えもするが、あと4年もただずに宅配センター拠点整備はほぼ終わる。そうすると宅配事業の収益率が、さらに上向く。

 ーー宅配事業の次を見据えた戦略は。

 大見 宅配センターに配食工場を併設する。現在、市町村の学校給食を当組合のスクールランチ方式にしたいという要請が30市町村くらいからきている。宅配センターとの併設で、配食工場を地域につくる。宅配の商品と配食原材料の配送が一本化ができる。配食工場から、スクールランチ、病院給食、施設給食、幼稚園給食、高齢世帯の配食弁当の4領域に対応できる。

 ーー現在は、どれくらい併設しているのか。

 大見 旭川と帯広の宅配センターに、それぞれ配食工場を併設している。加温庫を使えば、1時間圏内は運ぶことが可能なので、道内で配食拠点が30ぐらいできればと思っている。それで、ほぼ道内を網羅できる。

 ーーアイアイテー含めた物流4社とオリエンタルフーズを買収した。

 大見 一括で全株取得した。3年前、アイアイテーグループはファンドに売却された。ファンドはスポンサー探しをしていて、北海道の事業者に譲渡することによって、その企業グループの価値を生かせるとして、コープさっぽろグループに話が来た。アイアイテーグループの買収によって、物流の再構築ができる。アイアイテーはトライアルやラッキー、生鮮市場の配送を行っており、農産物系ではアークスグループも手掛けている。同じ方面に当組合の店舗と相手の店舗があったら、別々に行く必要はない。コープさっぽろグループの北海道ロジサービスとアイアイテーが調整すれば、積載効率が上がり、物流コストは下げられる。

 ーーアイアイテーの既存取引先との関係は。

 大見 継続しつつ、北海道ロジサービスとの関係を強化して、相乗りできるところは相乗りして効率を上げる。コープさっぽろグループの物流コスト構造がさらに下がる。

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