「ツルハはイオンの本当の強さを知らない。まさかと思うようなことも実行するのがイオン」と、さる経営者は語る。その経営者は、過去にイオンと関係があったが、当時のイオンの行動に底知れぬ“意志”を感じとったという。(写真は、ツルハHD本社)

 香港投資ファンド、オアシス・マネジメントの株主提案に直面するツルハホールディングス(HD本社・札幌市東区)。オアシスは13%弱のツルハHD株を所有し、13%強を保有する筆頭株主であるイオンに準ずる立場。オアシスは、会長職の廃止や社外取締役の交代、さらなる統合再編を促す株主提案を行ったが、ツルハHDは2023年7月7日の取締役会で、全提案の拒否を決定した。

 オアシスは、フジテックのガバナンス問題を巡る株主提案で経営権を創業家から奪取している。ツルハHDも創業家出身者が代々社長を務めているものの(創業家の持ち株比率は8%強)、ガバナンス上の問題はなく、M&Aを繰り返して再編にも前向き。8月の株主総会では、オアシス提案拒否が通過しそうだが、台風の目となるのがイオンの動向。両者合わせれば27%を超える保有比率となり、その存在感は大きいからだ。

 イオンは、ドラッグストア業界首位のウエルシアホールディングス(HD、本社・東京都千代田区)の50%強を持つ最大株主。イオンがドラッグストア再編を狙い、ツルハHDとの関係をこのままにしておくとは思えない。イオンが、ツルハHD(当時はツルハ)の株を所有するようになったのは、旧ジャスコ時代の1995年から。同様に資本が入っていた札幌フードセンターとツルハのジョイントでフード&ドラッグの店舗展開を進めていった。

 旧ジャスコは、ホーマック(現DCM、本社・東京都品川区)の株も保有、現在もDCM株4%強を持つ4位株主。旧ジャスコは、北海道の流通業界に強い関心を示し、毎年、当時の岡田卓也会長が北海道を訪問、資本関係のある道内流通業の経営者と相互理解を深めていたこともあった。

 イオンの岡田元也会長(卓也氏の長男)は、2005年からツルハHD社外取締役を務めていたが、2021年8月に退任している。その後、イオン出身の取締役はおらず、一説にはこの時点で両者の蜜月は終わったとされる。 

 ただ、イオンは、今回のツルハHD株主総会でオアシスと組む可能性は少ない。しかし、いずれはドラッグストア再編に踏み出すのは間違いないところ。ツルハHDとイオンが、ウィンウィンとなる選択は見通せない。ツルハHDには、新たに資本政策とともにさらなる主体的M&Aが欠かせなくなっている。



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