ホクノー相談役野地武さん(87)逝く、2人のカリスマ(セコマ故赤尾昭彦会長・アークス横山清社長)と不思議な縁

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 武さんとアークス横山清社長との出会いは、共同仕入れ会社の北海道CGCを通じてだった。「横山さんは、CGC会員の社長たちに、『私たちが働けるのは、夫人がいてこそ。CGCの旅行には夫婦同伴で夫人孝行をしよう』と言っていました。母は、父と行くこの旅行をとても楽しみにしていました」(秀一さん)。武さんは、CGCを通じて横山さんの経営を学び、ホクノーを地域に欠かせないスーパーとして成長させていった。2009年には秀一さんに社長を譲り、相談役に退いて経営には口出しをしなくなった。2011年には夫人が72歳で死去、武さんは一人暮らしになった。

 趣味は、畑仕事だった。農家出身ということもあって土に親しむことが好きだった。アスパラやトマトなどをホクノーの農園「ホクノー園」で育て、とりわけ豆には熱心だった。「インゲン豆より大きい豆を食べきれないほど作るんですよ。毎年もらっていましたが、食べても食べても冷蔵庫に残っていましたね」と秀一さん。

 今年に入って武さんは、体調を崩し入院、6月18日に肺炎で息を引き取った。「父は飲みに行くこともゴルフをすることもなく、仕事だけの人間でした。決して出しゃばらず寡黙で、晩年は仙人のような達観した印象でした。そんな父でしたが、新札幌駅前に『ホクノー新札幌ビル』の建設を決断したのは、先見の明があったと思います。スーパーが厳しい中、安定した経営ができているのは、父のあの時の決断があったからです」(秀一さん)。

 野球中継を見るのも好きだった武さんのために、秀一さんはスカパーを契約、自宅でいつも試合を見ていたという。「札幌ドームのフィールドシートで一緒に観戦したこともありました。日ハムの新球場に連れて行けなかったのが心残りです」と、秀一さんは寂しそうに話した。

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