芦別市に本社を置く食品スーパー経営の豊月は、地元で経営を続けてきた「フードD365芦別本店」(芦別市南2条東1丁目5-2、店舗面積約248坪=約820㎡)を2023年3月末で閉店する。前身の菓子店から数えて75年で芦別市から店舗を撤退する。(写真は、豊月が芦別市で展開している「フードD365芦別本店」)
豊月は、樺太の恵須取から引き揚げてきた創業者夫婦が、1948年に芦別市で菓子店を始めたのがルーツ。芦別市は当時、炭鉱で賑わい、菓子の他に食料品も扱うようになり、1965年頃に食品スーパーとして運営するようになった。
その後、子息の現社長、豊岡憲治氏が1973年頃に食品スーパー事業を継承したが、芦別の人口減が顕著なになってきたことを踏まえ、本部を苫小牧市に置き、「豊岡スーパー」として展開を始めた。苫小牧市を拠点に店舗を増やし、1995年頃にはディスカウントスーパーに転換、屋号を「フードD」に変えた。店舗は苫小牧、千歳、恵庭、札幌、江別と拡大。現在は、芦別本店を含め12店舗を展開、2021年度の売上高は147億4100万円。
独立ローカルスーパーとして現在も独立資本で運営しているが、商品仕入れに関しては、2017年10月に共同仕入れ会社の北海道シジシー(本社・札幌市豊平区)に加入、商品調達ルートの幅を広げている。
「フードD365芦別本店」は、同社にとって飛び地の店舗だったが、本社を芦別市の店舗に置き続けて、発祥の地の店舗として存続を図ってきた。しかし、最盛期は年間10億円の売り上げがあったものの、現在は半分以下になっており、今後も低下が避けられない。「売り上げの減少もあるが、それ以上に働き手の高齢化と新たな働き手を見つけられないことが、閉店を決めた大きな理由」と同社役員。
芦別市の人口は、最盛期の1950年代には約7万5000人だったが、2023年1月末現在で1万1946人、世帯数は6949世帯で高齢化率も2020年で47%を超えている。そうした中、市内には道北アークス(本社・旭川市)の「ラルズマート芦別店」、イオン北海道(同・札幌市白石区)の「マックスバリュ芦別店」のほか、2021年7月にダイゼン(同・上川郡鷹栖町)が「DZマート芦別店」を新規出店、スーパーは「フードD」を含めて4店舗ある。さらに、コンビニエンスストア7店舗、ドラッグストア1店舗、ホームセンター2店舗があり、人口規模からすると商業店舗が比較的多い。
豊月の役員は、「できることなら本店は残しておきたかった」と話すが、現在は同社創業関係者が現地におらず、店舗の運営管理に目が行き届かないことも重なって閉店を決断した。