帯広十勝で伝統のスーパーマーケット2店舗が、8月31日に閉店した。「ダイイチ壱号店」(帯広市)と「プラザ。いちまる清水店」(上川郡清水町)。一方は、ダイイチ(本社・帯広市)の1号店、もう一方は十勝のスーパー屋号として残っていた「いちまる」の最後の店舗。それぞれ閉店の意味合いは違うが、十勝のスーパーが転換期を迎えていることを示している。
(写真は、「ダイイチ壱号店」=上と「プラザ。いちまる清水店」)
「ダイイチ壱号店」(帯広市西1条南10丁目14番地)は、1958年7月に設立されたダイイチが、同年9月に賃借で開店させた、売り場面積約117坪(389㎡)の1号店。北海道のセルフ型スーパーマーケット(SM)1号店として営業を続けてきた店舗で、いわば北海道のスーパーの原点。その原点が、札幌でも旭川でもなく、帯広だったところにも、この店舗の価値はあった。
その店舗が遂に閉店の時を迎えたが、むしろ今まで63年間の営業を続けてきたことに驚きを感じる。大規模な郊外型スーパーの出店競争や中心市街地の空洞化は、20年以上前から進んでいた。「壱号店」の売り上げ減少は明らかで、10数年来の赤字店舗だったことは否めないが、1号店であるがゆえに閉店を遠ざけていた。2年前に一度は閉店を決めたが、周囲の声に押され撤回。再興を目指したものの、コロナ禍も影響して道筋を描けなかった。ことここに至って、「苦渋の選択」(若園清社長)をせざるを得なかった。
道内の食品スーパーで1号店が、現役で存続しているケースはほとんどない。多くはスクラップ&ビルドなどで早々と姿を消している。その意味では、ダイイチもようやく1号店を、良い意味でも悪い意味でも守ろうとする軛(くびき)から放たれることになる。
「プラザ。いちまる清水店」(清水町字清水第1線50番地32)は、イオン北海道(本社・札幌市白石区)が、十勝圏に14店舗展開していた「いちまる」を承継した中の1店舗。「いちまる」は、いちまる(本社・帯広市)が1969年からスタートさせた食品スーパーで、十勝では「ダイイチ」、「フクハラ」を含めた3強の一つだった。しかし、不採算店舗が多く赤字が膨らみ、2015年10月に旧マックスバリュ北海道(現イオン北海道)が「いちまる」の店舗を買収、傘下に入った。承継後に旧マックスバリュ北海道は、「いちまる」店舗を「マックスバリュ」にリニューアルすると同時に赤字店舗は順次閉店していった。
そして、最後まで残っていた「いちまる」屋号の店舗が「プラザ。いちまる清水店」だった。8月31日の閉店によって、十勝の地で52年間の歴史を繋いできた「いちまる」は、文字通り姿を消した。
「ダイイチ壱号店」、「プラザ。いちまる清水店」ーー閉店の意味合いはそれぞれ違えども、両社にとって閉店が持つ意味は深い。「ひとつの時代が終わった」(若園社長)という言葉がそのことを端的に示している。