2021年が明けた。コロナ禍は越年し、先行きの見通しが立たない濃い霧の中を当面は進まざるを得ない状況だ。本サイトの年頭を飾るのは、アークスの横山清社長(85)インタビュー。食品スーパーに身を置いて60年を超えた横山社長の言葉には、業界事情だけではなく社会情勢の変化を読み解く力も備わっている。生活と密着している食品スーパーの経営で体得した時代観は、先の見えない時代だからこそヒントになりそうだ。横山社長インタビューの3回目を掲載する。(写真は、インタビューに応えるアークス・横山清社長)
「アークスグループの21年の投資に特に大きなものはないが、店舗改装などは今まで以上にスピードアップをしようと考えている。また、今年で6年目になるが、新しい全社基幹システムの構築を進める。SAP社と組んで日本で初めて食品スーパーに導入するために取り組んでいるもので、百数十億円を投じてきた。一部は自動発注など部分的に動いているが、総体で動かせるように開発を急ぐ」
「表も裏も八ヶ岳のように、強制的に頭から押さえる基幹システムの仕組みではなく、八ヶ岳連峰経営の個性を生かした仕組みが出来上がれば、デジタルトランスフォーメーション(DX)のベースができる。そのための出費はいとわない」
「北海道では、東光ストアとラルズの『ラルズ東光生鮮流通センター』(石狩市)の機能強化を図ることなどを進めていく。また、東北では統合6年目になるベルジョイスの本社機能とセンターを一本化したり、宮城県のベルジョイス一部店舗向けにイトーチェーンのセンターを利用したりするなど、表からみたら分からないようなことをダイナミックに行っていく」
「ラルズは、2020年11月に居抜きで『スーパーアークス東苗穂店』(札幌市東区)を出店したが、基本は金ぴかの店舗はいらないと考えている。別世界のようにおもてなしの店を作っているところもあるが、それで日配品の利益がなくなってしまうようでは元も子もない。今後の食品スーパー経営に必要なことは、これからの経済、社会をどう見通すかにかかってくる。国民の実質所得は下がってきているが、私はもっと下がるのではないかとみている。それに応えるためには、家庭を中心とした食生活、つまり命の綱をきっちりと守ることだと思う。アメリカは所得格差が激しくなって、高所得者の行くスーパーと低所得者の行くスーパーが分かれているが、日本ではそこまでにはならないだろう。だから、所得が2000万円の人も200万円の人も等しく使えるような店にしなければならない」
「今年の年頭スローガンは、『我ら生命防衛隊 技術デジタル 精神はリアル 災禍を転じて 幸福と為す!』。食イコール命、命を支える生命防衛隊を目指すのが、アークスグループということだ」(この稿終わり)
※2021年1月4日、記事一部修正しました。