ホームセンターの島忠(本社・さいたま市中央区)が、ニトリホールディングス(札幌本社・札幌市北区、東京本社・東京都北区)のTOB(株式公開買い付け)提案を受け入れる方針を示したことで、島忠はニトリの完全子会社になることが決まった。これによってニトリより前に提案していたDCMホールディングス(同・東京都品川区)のTOBは不成立になることが確実になった。ニトリとDCMの島忠争奪はニトリに軍配が上がった。(写真は、「ニトリ」の店舗)

 ニトリの提示した島忠株式の買収価格は1株5500円で、DCMの示した4200円よりも3割高い。DCMは16日までTOBを実施しているが、島忠がDCM提案の受け入れを撤回してニトリに乗り換えたことからニトリのTOBが成立することはほぼ確実になった。ニトリのTOB期間は16日から12月28日まで。

 DCMは10月2日に島忠TOBを発表、ニトリはその発表を知ってから動き出し10月29日に島忠へのTOB提案を発表、北海道発祥のニトリとホーマックの流れを汲むDCMが資本市場で争う格好になった。結果的に島忠は高い価格を示したニトリに乗り換える形になった。ニトリは最大2100億円を投じる。

 こうした価格差は、経営統合後に島忠の業績をどこまで伸ばせるか、その見立ての違いによるもの。買収提案でよく利用されるDCF法(将来どの程度の利益を生み出せるかで算定する株価)による島忠の株価は、DCMの公開買い付け代理人であるSMBC日興証券は最大で4837円、ニトリの公開買い付け代理人である大和証券は最大5763円を示し、千円近い開きがあった。このことがTOB価格の違いになった。

 今回のニトリによるTOBは、創業者似鳥昭雄会長兼CEOの経営観がストレートに反映されている。「自ら努力して相手との相性をつくっていくもの」、「交渉は3回断られても4回目からがスタート」、「もうこれでいいと思ったとたんに負ける、勝負とはそういうもの」、「右手にそろばん、左手に義理人情」など今回のTOBは、似鳥語録を凝縮したものになっている。
 一方のDCMは島忠のニトリへの乗り換えについて正式にリリースしていないが、断念せざるを得ない状況だ。DCMの無念さは今後の企業経営にどう表れてくるか。


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